『犬と、走る』

この本の存在を知ったのは、2年前の朝日新聞の書評欄だった。

学生のときに体験した犬ぞりを忘れられず、25歳で安定した仕事を辞め、何のつてもなくカナダに移住し、極貧生活を経て、15年かけて夢を叶えた女性の自伝的ノンフィクション。書評では、著者の破天荒なプロフィールが主に紹介されていて、なんだか面白そうに思えた。

いつか読もうと思いつつ、忘れかけていたのだけど、今年、NHKのドキュメンタリー番組でこの人……本多有香さんによる犬ぞりレース挑戦が取り上げられていた。図らずも、本を読む前に本の続きを見ることになった。

番組の中で、本多さんはベテランのマッシャー(犬ぞり師)として登場し、犬たちを巧みに導いてアラスカの白い雪原を走っていた。自分と同い年だが、とても魅力的な女性だった。レース前のレセプションで美味しそうにビールを飲む姿を見ると、かなりの酒好きとわかる(本の中でもバーに入り浸っている)。気さくで酒好き、しかも美人なのだ。

一方で、番組は厳しい現実も紹介していた。冬のシーズン中はトレーニングにかかりきりなので、レースの資金は夏だけで稼がなければならない。数十頭の犬たちのえさ代にも莫大なお金がかかる。ビル清掃などのバイトを入れまくっても足らず、自分の食事代を削る始末で、見かねたハンバーガーショップのオーナーがただで食事を提供していた。

本を出版しても、この極貧生活なのか。今年文庫化されたから、少しは印税が行けばいいのだけど。

TVでその極貧ぶりに軽く衝撃を受けていたのだが、本を読んだらもっとすごかった。お金がないのでカナダからアラスカまで1200キロを中古のボロ自転車で走破したり、先輩犬ぞり師の下で過酷な下働きを4年間も続けたり(ほぼ無給)、オーストラリアにビザなし入国して不法労働したり。

TVで紹介されていた本多さんの自宅も、ホームセンターで買ってきた資材を一人で組み立てたものだった。というか、その土地を開墾することから自分でやっていた。一人で森の木を切り倒し、借りてきた重機を自分で運転して整地したのだ。すべては、お金を節約し、犬ぞりレースに備えるため。

そこまでして追い求める犬ぞり師の道。職業と言うには稼げなすぎるし、趣味と言うには犠牲が大きすぎる。このまま進んでも、決して安定することのない過酷な未来が続いている。

それでも。大きな自然に囲まれながら、静かな冬の森を犬たちと駆け抜けるひとときは、それまでの苦しみをすべて帳消しにするほど素晴らしいのだという。風の音とそりの音、犬たちの息づかいだけが聞こえる世界。

 

あの番組を見て、この本を読んだ後、生き方についてよく考えるようになった。その気になれば、どんな人生も選び取れるんだなぁ、と。

 

犬と、走る (集英社文庫)

湯の丸高原

昨日から、不安定な天気。夕方、クルマでスーパーに行き、買い物を終えて駐車場に戻ろうとしたら、土砂降りになっていた。クルマへと走る10秒間に、けっこう濡れた。

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またも周回遅れの日記。

7/23、バイクで近くの湯の丸高原に上る。近所の県道をのんびり上っていくだけで標高2000mに到達できるというのは、さすが長野県だと思う。この日は暑くてTシャツでちょうど良い感じだったが、ここまで上がると寒いくらいだった。

バイク屋で初心者向けの林道として教えてもらった、湯の丸高峰林道に行ってみた。ちゃんとしたオフロードバイクでダートを走るのは初めて。ものすごく緊張した。北海道ツーリングでは750でダートを走ったし、SR500で山梨の林道を走ったこともあるが、ずいぶん昔の話だ。

始まりから結構な下り坂なのが怖い。ついつい、リアブレーキを踏んでしまう。あと、タイヤの空気圧が高すぎるのか、地面のグリップ感が頼りない。圧を落としてくるべきだった。

どこまでも続く下り坂が恐ろしくなり、途中で引き返すことにした。そもそもオフロード用の装備を身につけていないので、すっ転んでケガをするのが怖かった。装備を調えてから、また来よう。

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帰りに、池の平湿原に寄ってみた。

有料駐車場に100円でバイクを停めて、さて散策するかと地図を見たら、片道30分と書いてあった。意外と広い。しかも下り坂だから、帰りは登ってこないといけない。まぁ、時間はあるから行ってみるか……

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とても美しい場所だった。このところ雨が降っていなかったからか湿原に水が少なく、花も終わりかけていたが、十分に自然の風景を堪能できた。

 

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よい角度で撮れなかったけど、アヤメ。

 

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謎の花とヒョウモンチョウ

 

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ハクサンフウロとシマハナアブ

 

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ノシメトンボ

 

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ノアザミマルハナバチ

 

思ったよりは撮れていたけど、防水コンデジのTG-3ではこれが限界かな。やっぱり、レンズの良いカメラが欲しくなるなぁ。

 

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もう少し早い時期なら、手前の地面にコマクサという高山植物が咲き乱れているらしい(ここには写っていないが、大きな柵があり、立ち入りが制限されている)。この日は景色だけだった。

 

良い場所を見つけた。また、違う季節に来てみよう。

親戚

先々週の連休の出来事など…

母の傘寿のお祝いを名目に、山奥にある叔母の山荘に家族全員が集合した。我が家の4人きょうだいが全員集まるのは数年ぶり。叔母の一家も勢揃いし、甥っ子姪っ子、従兄弟の子も入り乱れて、総勢20人近くで大宴会となった。あと、犬も3匹。

天気はいまいち。標高の高いところなので、一日中霧だった。涼しいのは良かったが。

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雨がやまないので、バーベキューはガレージの中で。日が暮れてから、ようやく雨が上がった。

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夜遅くまで、よく話した。

ほぼ20年ぶりに会う従兄弟もいた。お互いにいい歳になって、色々な経験をして、少しは成長してきたせいか、若い頃よりも素直に会話できるようになった。今回のことをきっかけに、(一部の)親戚間で良い関係が築けそうだという希望が持てた。

それにしても、ほぼ同い年の従兄弟が今年2人離婚。難しいものだな……

乗り換え

また、バイクを乗り換えてしまった。

MT-07はミドルクラスとしては異常に軽くて取り回しの良いバイクだけれども、それでも自分には重すぎた。ガソリンを満タンにするのが怖かった。そんな調子だから、20kgのキャンプ道具を乗せてのキャンプツーリングなど、とても無理だった。

もっと軽くて、ゆっくり走れるバイクが欲しい。と思いながら近所のバイク屋をのぞいたら、ぴったりのバイクが置いてあった。

XR-230の中古。走行が少なく外見もキレイで、第一印象は良かったが、年式が2008年と少々古めなのが気になった。絶版車でもある。でも、そのぶん安い。タイヤも新品にしてくれるという。

結局、買ってしまった。

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230ccの空冷単気筒エンジンは、ホンダのスポーツバイク用としては最後のキャブ仕様エンジンになると思う。リターンしてからはずっとインジェクションのバイクに乗っていたので、チョークを引いてから始動するのが、なんとも懐かしい感覚だった。燃料コックを操作するときの、キュッという感触も良い。

実際に乗って走ってみた感じは……完全に「カブ」。控えめなエンジン音も、せわしないギアチェンジも、直立したライディングポジションも、カブそっくり。6速ミッションを装備しているが、60km/hで6速まで使い切ってしまう。この遅さ、まさに求めていたものではあるが、高速道路はちょっと心配だ。

でもこいつなら、自分でもなんとか林道を走れそうだ。オフ装備を揃えなくては。まずは、ブーツが欲しいな。

引っ越し

数えてみたら、人生12回目の引っ越し。

 

疲れるから一人暮らしはもう二度と嫌!と思っていたが、実家に戻って2年、だんだん息苦しくなってきた。去年から状況的にも出て行けそうな条件が整ったので、また一人暮らしに戻ることにした。

ただ、東京で優雅に一人暮らしするには収入が足りない。ので、以前から何度も来ていた長野県の上田エリアで暮らすことにした。部屋探しの時期が悪くて物件の選択肢があまりなく、中途半端に広すぎる部屋を借りることになった。家賃は東京の半分以下だと思う。

目の前が大きな川なので、眺めと日当たりは最高。だが、半端ない激流で、音がかなりうるさい。よく水墨画で、滝のそばの小さな家で仙人が暮らしている絵があるけど、こういう感じなのだろうなと思った。2週間ほど経って、ようやく慣れてきた。

大きなスーパーやホームセンターがいたるところにあり、巨大ショッピングモールも2つあるので、買い物には困らない。コンビニなど、嫌と言うほどたくさんある。本屋もあるし映画館もある。マクドナルド、モスバーガー丸亀製麺すき家、吉野屋、スターバックスタリーズなど何でもある。ただし、どこへ行くにも車が必要。

歩いている人や自転車をほとんど見かけないのは少々不気味だが、日本の郊外なら(いや、先進国の郊外なら)どこでもこんな感じだろうと思う。ただ、ちょっとコンビニ行くにも車を使ってるとガソリンの減りが激しい。自転車を手に入れたい。

今日は異様に暑かったが、冬はむちゃくちゃ寒そうだ。そのうち、コタツやストーブも必要になるだろう。どんな暮らしになるのやら。

いつまで、ここにいるのかなぁ。

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戦争の絵

兵庫県立美術館の企画展「1945年±5年 激動と復興の時代 時代を生きぬいた作品」を見に行った。引っ越しする前に、見ておきたかったのだ。

太平洋戦争でプロパガンダに利用された有名画家の戦争画から、前線に赴いた従軍画家のスケッチ、満州や台湾などの植民地を描いた絵画、そして大戦末期〜戦後に描かれた廃墟の絵など……思った以上にたくさんの絵があった。コンクリートで作られた彫像もあった。当時、金属が不足していたのでブロンズ像を作れなかったらしい。ある意味、貴重なものだ。

戦争画の展示室にあった解説によると、日本軍の調子がよかったのは大戦初期だけだったので、シンガポール侵攻など同じ主題の作品ばかり制作されたらしい。情けないというか、笑えるというか……

戦争画って、美術品としてどういう位置づけになっているんだろう。ふと気になった。大画面で緻密に描かれていて迫力はあるが、ちっとも心に響いてこない。たとえ藤田嗣治が描いたにしても。博物館や美術館の奥に収蔵されて、こういう企画展でしか日の目を見ないのだろうか。ちょっとかわいそうな気もする。

見ていて心に響いたのは、もっと地味で個人的な作品だった。満州に送られた兵士が家族に送った絵手紙、広島に原爆が投下された直後に教師が描いたスケッチ、水木しげるが復員前の療養中に描いた絵。その人だけの個人的な戦争が、その人だけの目線で描かれていた。すごく身近に、生々しく感じた。

今の時代なら、スマホで写真を撮ってSNSに上げるんだろうけど。絵という表現手段が使われたから、ここまで心に迫ってくるのだろう。絵を描きたいな、と思ってしまった。

(下の写真は、無駄にぐるぐる歩かされる美術館の階段 by Tadao ANDO)

https://www.instagram.com/p/BGQfJ5XPotk/

ドライブとFM

車の車検。割高なのはわかっていたが、面倒なのでディーラーに依頼してしまった。まぁ10年以上走っている車だし、しっかり見てもらおう。

代車は当初軽自動車の予定だったが、出払っていたらしく、新車のミラージュだった。モデルチェンジしたばかりの新型だ。ワクワクして乗り込んだ。

アイと比べると排気量が倍近くあるので、ものすごくトルクを感じる。ビュンビュン走る。ただ、どうも違和感があった。アクセルを踏み込んだとき、エンジンの応答がワンテンポ遅れるのだ。0.5秒くらい。アイではそんなことはないし、新車なので壊れているってことはないから、意図的なセッティングだろうと思う。

踏み込むと同時に加速を予測して無意識に体が前傾するのだけど(バイク乗りの癖だ)、車体が反応せず、あれ?と思ったときに加速し始める。そんなことを繰り返していたら、乗り物酔いのようになって気持ち悪くなってしまった。

ひょっとしたら、アクセルとブレーキの踏み間違いを防ぐ仕組みなのだろうか。その効果はあるだろうけど、自分には合わないなぁ。今後、ミラージュに乗り換えることはないだろう。

慣れない車を乗り回すのは気が進まなかったが、乗らないとどこにも行けないし、バイクは暑すぎるので、今日もミラージュで出かけた。いつもはカーナビにiPodをつないで音楽を聴くのだけど、代車のナビにはつなげないので、FMを聴きながら走った。

FMからは「DJマーキー」の軽妙なトークが流れていた。この人の番組は学生の頃から聴いているけど、今何歳ぐらいなんだろう?ラジオ局は変わったが、声の感じが全然変わらない。そして相変わらず、しゃべりも面白い。マーキーが若かりし頃、初めてロサンジェルスの街に行ったとき、空手家のふりをすれば襲われないだろうと思って、信号で立ち止まるたびに空手の正拳突きをしていたという小話には笑った。

そういえば、来月この街から引っ越してしまうのだった。このラジオを聴けなくなるのは、少し寂しいな(Radikoプレミアムを使えばいいけどさ)。