オチのある話

日曜日。友達の誘いを受けて、落語というものを初めて見た。

K大学駅からしばらく歩いたところにある居酒屋。ここで隔月、「寄席」をやっているのだ。

狭い店内の一角に設けられた高座を囲んで、十数人の観客席が置かれている。ここで一席の落語を楽しんだ後、居酒屋の料理を楽しむという趣向なのだ。

高座に上がったのは、柳家三之助さん。オレは一番前に座ったので、すごい迫力(?)だった。つばが飛んできそうな勢い。初めて聞いた噺だったので、ワクワクした。オチも楽しめた。

40分の落語はあっという間に終わった。いったん客席を空にして、店内を元通りに配置転換。ここからコース料理付き、飲み放題の宴会になる。

最近、京都にはまっているという店主がこしらえた料理は、自ら仕入れてきた京野菜がふんだんに使われていて、目が覚めるほど美味しかった。この日のために用意された京の酒も美味。惜しむらくは、日曜日なので思いっきり飲めないということだ......

しばらくして、着物からシャツに着替えた三之助さんが客席にやってきた。こちらのテーブルにも来てくれた。落語について色々訊いていると、こんなことを話してくれた。

「落語には、結末というものがない。途中でいきなりオチが来て、終わる。歌舞伎も同じ。結末を語らないのが、日本の物語の伝統なのですよ......」

これを聞きながら、オレは最近読み終わった小説のことを思い出していた。

料理のシメは、ラーメンだった(この店はラーメン屋でもある)。黒々としたスープに、ちぢれた麺が沈んでいる。店主いわく、昭和40年代によく食べられていたラーメンを再現したものらしい。

これが、びっくりするくらい美味しかった。あまりラーメンには詳しくないけど、こんな醤油ラーメン食べたことない。香りが良くて淡白で、しょっぱくないのに、しっかり味がある。いい醤油を使っているからか、醤油独特の苦みがない。ちょっと衝撃の味だった。

いい気分で店を後にして、帰宅。さて、料理の写真を見ようかとカメラを探したら......ない。店に置いてきてしまった。

また来週、行かなきゃ。