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おおとら

昨夜のこと。

仕事を終えてから青山に行き、昔お世話になったAさんと呑んだ。わりとお年を召した女性である。一軒目を出た後、他の人たちと合流して、さらにワインなど飲んだ。皆、終電まで飲みそうな勢いだったが、オレは明日のことを考えて途中で帰った。

夜中25時半頃、携帯に電話がかかってきた。寝ていたので、寝ぼけたまま電話に出てみると、相手は「赤坂警察署です」と名乗った。

頭が寝ていたので状況を飲み込むのに時間がかかったが、要するに、Aさんが泥酔した状態で警察に保護されているので、身元引受人になって欲しいという話だった。本人は泥酔しているのでまともに話ができず、やむなく携帯の履歴で一番上にあったオレの電話番号に電話したらしい。

Aさんは一人暮らしで、近所に親戚などもいない。

眠いし、寒いし、ものすごく行きたくなかったが、捨て置くわけにもいかない。雨の中、タクシーで赤坂警察署に向かった。

夜中の警察署は明かりがついていたが、人影は少なかった。電話をした警察官が出迎えてくれた。Aさんは、ガラス張りの檻のようなスペースで寝かされていた。毛布まで掛けてもらって、いびきをかいて気持ちよさそうに寝ている。その顔を見て、ちょっと安心した。枕元には、別の警察官が座っていた。監視のためだろう。

警察官にAさんの身元を説明する。べろんべろんに酔っていたが、名前と住所はちゃんと喋っていたらしい。オレは住所まで知らなかったので、助かった。

「身元引受人......」という書類に記入すると、手続き終了。これからどうするんだろうと思っていたら、警察官が「じゃあ行きましょう」と言った。

Aさんを無理矢理起こし、警察署の前に止めたタクシーに、警察官3人がかりで押し込んだ。暴れるわけじゃないけど、まともに歩けないので連れて行くのが大変だった。オレも隣に乗る。「じゃあ、あとはお願いします」。おーい、それで終わりかよ。

酔っぱらい相手にするのが大変なのはわかるが、朝まで寝てもいいというオプションがあればよかったのに。

雨の中、タクシーは千葉に向かった。Aさんはくだをまいていたが、シートベルトで座席にくくりつけられているので身動きできない。

Aさんの自宅は何年か前に訪れたことがあったので、なんとか見つけることができた。タクシーの運ちゃんにも手伝ってもらって、家の中へ。しかし、途中Aさんが足を滑らせ、こめかみを切ってしまった。血が出ていたので、困ったなと思っていると、運ちゃんが車から絆創膏を持ってきてくれた。

Aさんは自分の家に上がると安心したのか、多少まともになった。まぁ大丈夫そうだったので、退散。待たしていたタクシーに乗って、今度は東京へ。

「あんな大虎はひさしぶりに見たね」と、運ちゃんは言った。「ご苦労さんでした。これ、サービスです」。車のクーラーボックスからお茶を出してくれた。

早く家に帰れるようにという心遣いか、タクシーはすさまじいスピードで首都高をひた走った。雨の夜景を眺めながら、人生いろいろなことが起こるんだなぁと思っていた。