映画『ノルウェイの森』(監督・脚本:トラン・アン・ユン)

ひょんなことで、『ノルウェイの森』の試写会に参加できた。

公開前の映画なので、印象のみの感想を。

何をさておき、映像が素晴らしい。圧倒的なまでに緻密な美術によって、「1969年」が完璧に再現されている。とくに学生寮の作り込みには驚嘆した。

むしろ、よくできすぎていると言ってもいいかもしれない。何もかもが美しく、スタイリッシュに感じられてしまうからだ。異臭が充満しているはずの学生寮も、オシャレな外国のドミトリーに見えてしまう。

このあたり、トラン監督の色が出すぎてるのかなと思う。でも、美しい映像はそれだけで価値がある。あの独特の空気感は、やっぱり素晴らしい。

ストーリーは、驚くほど原作に忠実。ただ、尺の関係でカットされたシーンが多いようで、未読の人にはわかりにくいと思う。個人的希望として、3時間のロングバージョンも公開して欲しい。

賛否を呼びそうなのは、「直子」役の菊地凛子の演技。この複雑きわまりないキャラクターを、彼女は必死に解釈して、全身全霊をかけて演じていると感じた。

公開されたら、もう一度観てみたい。できれば頭の中から小説のストーリーを追いだして、純粋に一本の映画として。