SIGMA DP2x

そもそも、この秋にはOlympus PENの新しいレンズを買う予定だった。場合によってはボディも買いたいと思っていた。しかし、発表されたレンズは、自分の求めていたものとは違った。どれも性能は素晴らしいと思うのだけど。12mmのスナップレンズには惹かれたが、ちと高価すぎた。

ならばと中古屋に行ってみたが、新しいボディが出たばかりのせいか、micro4/3の中古レンズは品薄でめぼしいものがなかった。つらつらと陳列棚を見ていて、ふと目にとまったのがSIGMA DP2xだった。値札を見て驚いた。えらく安くなっている。

にわかに興味が出てきて、手にとってみた。真っ黒でプラスティッキーなボディはチープそのもの、ボタンはべこべこしていて高級感のかけらもない。しかし、少し触って操作しただけで、手に馴染むものを感じた。撮影に必要な操作を最小限の手順でこなせるように、インターフェイスが考えられている。昔のフィルムカメラを思わせる操作性。見た目のとおり、ストイックなカメラだ。

いささか危険な香りも漂っていたが、中古レンズと変わらない値段だったので、買ってしまった。

このカメラに搭載されているFoveonセンサーには、昔から興味があった。ある意味、デジタルカメラの限界を突破する可能性がある技術だと思う。ただ、通常のセンサーにはない「クセ」があるという情報は随所で目にしていた。期待と不安を胸に、公園で試し撮りしてみた。

すぐに気付いたのは、暗さに弱いことだった。午後3時過ぎで、夕方というには明るい時間帯だったが、木陰に入ると手ぶれ警告ランプが点滅した。このカメラ、オートISOに設定しているとISO 200までしか感度が上がらない。Foveonセンサーは原理的に低照度に弱く、感度を上げるとノイズが出やすいので、こういう仕様になっているようだ。つまり画質最優先、画質を落とすくらいなら三脚使えよ!という設計なのだ。必要に応じて、感度をマニュアル設定する必要がある。

色々試した結果、ISO 400は常用可能、800はぎりぎりOKという感じ。それ以上はノイズで画がざらつく。

レンズのF値が2.8と、最近の高級コンパクトデジカメにしては暗いのも原因だろう。この点は、無理に大口径化していない余裕あるレンズ設計、とポジティブに解釈しておく……

このカメラには手ぶれ補整機能もない。夕方〜夜間〜早朝に撮影する場合は、三脚もしくは一脚が必須だと思う。今のデジカメは高感度だから夜でも手持ち撮影できるが、このカメラはしっかり三脚に固定して長時間露光しなきゃならない。

常に光を意識して、きちんとした撮影プロセスを求められる…

このあたりは、昔のフィルムカメラと同じだ。いいかげんに撮ると、手ぶれして失敗する。被写体の光を吟味して、真剣に撮らないといけない。正直、面倒くさいが、融通のきかないところが逆に面白いとも言える。

このカメラの真骨頂は、やはりFoveonセンサーにある。手ぶれに注意し、ピンを合わせ、露出をはずさないという基本さえ押さえていれば、驚くほど鮮明で色の濃い写真が撮れるのだ。

http://www.flickr.com//photos/charlie_222/tags/dp2x/show/
(DPで撮った写真のスライドショーです)

RAWファイルから現像したJPEGファイルのサイズは460万画素程度だが、1200万画素のOLYMPUS PENよりもシャープに感じる。色の出方も独特で、赤、緑、青がこってり乗っている印象。なんというか、「深み」を感じる。色についてはRAWファイルの調整でもっと追求できそうだが、自分にはまだそこまでの知識がない。1枚のRAWのパラメーターをいじりながら、ああでもない、こうでもないと悩んで、時間ばかりかかる。でもそれが、楽しいのである。

ただし、どうしようもないのが、赤が飽和しやすいというFoveonセンサーの致命的欠点。直射日光下で赤い花を撮影すると、赤がギラギラして、特殊効果みたいな画になる。後で修正できるレベルじゃない。これはもうカメラの特性として受け入れるしかないかな。

扱いづらい上に、とんでもないクセがある暴れ馬だが、上手く乗りこなせば素晴らしい写真を出してくれる。ツンデレカメラ、それがDP。