『ティンブクトゥ』(ポール・オースター)

ポール・オースターの小説を読もうと思って、本屋で選んでいるとき、表紙の犬に惹かれて買ってみた。犬が主人公として一人称で語る、正真正銘の犬小説。

人語を解す犬(喋る能力はない)が、主人である酔いどれ詩人と旅をしながら、半生を振り返る。さまざまな別れと出会いの中で、犬にとって本当の幸せとはなにかを考え続け、最後にその答えを発見する。

柴田元幸のあとがきの受け売りだけど、オースターの小説(2冊しか読んだことないけど)は読み手が「こうあって欲しい・こうあるべきだ」と思う筋書きをあえて外してくる。意外な展開、というほどのものではない。物語はごく普通に流れていく。でも、読み手は「なぜそうなる?」というもどかしい想いにとらわれる。だから、読み終わってすっきりすることがない。もやもやが残る。

この小説も、読み終わってもやもやした。あそこでああしておけばよかったのに!とか思った。でも、そうやって感情を動かされるのが、良い小説の証なんだろうな。

ティンブクトゥ (新潮文庫)