「篠山紀信展 写真力」

もちろん、写真そのものも素晴らしいのだけど、この展覧会の価値は、ポートレートをあのサイズに引き延ばして展示したことに尽きると思う。

完璧な機材・構図・照明のもとに撮影された写真は2m以上のサイズに引き延ばされても精細さを保ち、人物はますます生き生きと浮き上がってくる。日本刀を構えた三島由紀夫は、そのナルシスティックな内面がありありとさらけだされていて、少し気の毒に思えるほど。

大人数を撮影した写真も、あのサイズだとひとりひとりの顔がはっきりと見える。1987年の豊島園プールの写真はすさまじい迫力だった。数百人の半裸の人々がプールに蝟集している様が、ものすごい解像度で写っている。プールサイドのタオルの上に置いてあるタバコの銘柄が読み取れるほど。普段使っているデジカメがとたんにしょぼく思えてくる…。まぁ、相手は大判カメラだから勝てるわけないが。

見終わったあと、図録を買おうと思ったのだけど、見本をぱらぱらと見てみたら幻滅した。あの大きさのプリントで見るから、あの感動があるのだ。

オレも自分の写真をでっかくプリントしようかな。