旅妄想

7月から続いた体調不良は、今年の夏の高温による肉体的疲労が原因だと思う。気温36℃の日中にバイクで4時間走ったりしたからだ。

なので、高温注意報が出ている日(つまり最高気温35℃以上の日)はバイクに乗らないことにした。今日がそうだ。ちょっと表に出るだけで、日射しと熱風と道路からの照り返しで頭がふらふらしてくる。まだ体調が完全に戻ってないし、今日はクーラーの効いた自室でのんびりしていた。

昼、BSで、バイク旅のドキュメンタリーを見た。ユーラシア大陸の西端から東端まで、4か月かけて走るという旅。戸井十月(本名、ソビエト十月革命にちなんで名付けられたらしい)という作家が60歳で挑んだこの旅は、2009年に4回シリーズで番組化されていた。戸井さんが今年死去したのを機に再放送されていたのを、遅まきながら第3回から見始めて、今日が最終回の第4回だった。

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サポートカーが伴走するとは言え、地図を見ながら走り(GPSなし)、ときには現地の人に道を尋ね、たどり着いた田舎街で飛び込みで宿を確保するという「便利じゃない」旅。その「旅をしている感」がリアルで良かった。泊まる宿がド田舎の安ホテルばかりなのも良かった。自分の昔の旅を思い出して懐かしくなってしまった。

この人は北米・南米・アフリカもバイクで走破していて、その過去の旅の様子もフラッシュバック的に紹介されていた。その中で、サハラ砂漠を縦断したときのエピソードが面白かった。

サハラ砂漠に道はなく、街もないが、砂漠のど真ん中にホテル兼カフェ兼ガソリンスタンドのようなテントが点在していて、ドライバーはそこを頼りに数百キロを移動する。そのようなルートを知っているのは、サハラを旅慣れたドライバーだけ。

戸井さんは、フランスからニジェールに中古車を輸出している業者に出会い、道案内を頼んだ。その業者というのは、仕入れた中古車を自分たちで走らせてサハラを縦断し、ニジェールに運んでいる。すごい仕事があるものだ。社長は若いフランス人だった。お金のためではなく、サハラが好きだからこの仕事をしているという。

この人が戸井さんに教えた、サハラ縦断の裏ルートがまたすごかった。砂漠が大西洋に接する海岸線のビーチを走るのだ。干潮のときしか使えないが、海水で湿っているので砂漠よりも走りやすい。道というか、ただの波打ち際を、たくさんの車が走っていた。

今回のユーラシア横断で戸井さんが走っていたモンゴルも、同じようなものだった。地平線まで真っ平らな原野に、縁石すらない轍だけの道が延々と続いている。道標はほとんどなく、地図も役に立たない。戸井さんたちは、地平線から地平線へと続く送電線を頼りにウランバートルを目指す。

道なき道の旅、というのは憧れる。ひとつの意味で、究極の旅だと思う。パタゴニアのアドベンチャーレース(これは人力だけど)のドキュメンタリーを見たときも興奮した。一度やってみたいが、無理だろうなぁ。猛暑日にクーラーで体を休めているような人間には(;´∀`)