屋久島旅行(4日目)

予備日として空けておいた4日目。

当初のもくろみでは、2日目で疲れた体を3日目のカヤックツアーで癒した後、宮之浦岳に登るつもりだったが、20kmを超える行程でたまった脚の疲れはなかなか回復せず、この日もがっつり疲労が残りそうだった。

天気予報では晴れそうだし、どうしても、晴れた山に登ってみたい。そこで、ガイドブックで「手軽なルート」と紹介されている黒味岳に登ることにした。

黒味岳の登山口は宮之浦から遠く、バスで行くのは難しいので、前の日の夕方に原チャリをレンタルした。渡されたバイクは、なんと懐かしのホンダDio ZX。20世紀のバイクかよ…

翌朝、屋久島に来て初めての太陽が昇った。

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7:30出発。天気は快晴、涼しい海風が心地よい。まずは、益救神社で山登りの安全を祈願した。 

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県道77号線を南へと走る。時代遅れの2ストロークエンジンは、出足はいまいちだが高回転の伸びはさすが、快調に飛ばす。ただ、明らかにステアリングがおかしく、右へ右へと曲がろうとする。たぶん事故でハンドルステムがいかれて、そのままになってるんだろう。常に右手に力を入れておかねばならない。

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安房から、山へと登るワインディングロードに入る。急な登りに、エンジンがぶぃーんと唸りを上げる。力強く登るDio。なかなかやるなと思っていたが、だんだんスピードが遅くなってきた。スピードメーターを見たら30kmしか出ていない。まぁ、じいさんバイクだから仕方ない。頑張れじいさん。 

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気がつくと、スピードが20kmになっていた。ヤクスギランドを越える頃には、10kmまで落ちていた。明らかにおかしい。エンジンは回っているのに、スピードが上がらない。クラッチか変速機構が壊れているようだ。マフラーからもうもうと白煙を上げてエンジンが頑張っているのに、進まない。地面を蹴って勢いを付けてみたがスピードは上がらず、やがて全然登らなくなった。

登山口まであと500mくらい。ここまで来れば、まあいいか。バイクは路肩に置いておく。帰りは下りだからなんとかなるだろう。安房まで下りた後が心配だが、どっちにしろ今は携帯が圏外なので助けを呼ぶこともできない。今度来る時は、Docomoに換えておこうかな…

10分ほど舗装路を上ると、登山口に着いた。駐車場は車でいっぱいで、途中の林道にもたくさん駐まっていた。宮之浦岳に登っている人たちだろう(黒味岳は、宮之浦岳に向かうルートの途中にある)。

登り始めたのは10時過ぎ。バイクのトラブルで、ずいぶん遅くなってしまった。ややペース上げ気味で歩く。時間のせいか、登山道には誰もいなかった。黒味岳で引き返す人はあまりいないのだろう。ガイドブックには平坦なルートと紹介されていたが、短くて急な登り下りが連続していて、それなりに疲れる道だった。そりゃ、ならせば「平坦」だろうけど。

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森の様子は、白谷雲水峡とはだいぶ違った。屋久杉以外の灌木が多く、明るい雰囲気だった。 

休憩を挟まず歩き続けて、12時前に「花之江河」に到着。日本最南端の高層湿原らしい。黒味岳は目の前だ。ここでお弁当。

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弁当屋の標準サイズの弁当は量が多すぎたので、おにぎり2個の「朝弁当」を注文しておいた。これで十分。

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食事をしたら、水が残り少なくなった。途中の山小屋で補給するのを忘れていた。地図によると水場が近くにあったので、行こうとしたが、水場に向かう道が悪く、途中で湿地に片足を突っ込んでしまった。シューズが泥まみれ。やる気をなくして、帰りに寄ることにした。

宮之浦岳への登山道を外れて、黒味岳に登り始める。意外と険しい。ロープが常設されている岩場が3箇所くらいあった。これ、落ちたら帰れなくなるな。

狭い登山道を歩いていると、シカが道をふさいでいた。 

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どいてくれないかなぁ。

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湿原から30分ほどで、山頂の岩に到着。

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見ると、男性がひとり岩の上で寝ている。気持ちよさそうだ。素晴らしい景色ですね〜と、しばらく雑談。 男性は携帯電話の充電切れで写真を撮れないことを残念がっていたので、代わりに写真を撮って、後でFacebookで送ることにした。初対面の人とも簡単に連絡が取れるFBは、こういうとき便利だ。

男性が立ち去った後、しばらく山頂を独占して景色を楽しんだ。絶えず雲が沸いては消えて、飽きることがない。

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名残を惜しみつつ、山頂を後にする。手持ちの水が完全になくなったので、補給せねばならない。行きに断念した水場を探す。地図上のその場所には水場らしい設備はなく、泥のたまった浅い沢がちょろちょろ流れているだけだった。たぶん飲めるのだろうが、勇気が出なかった。手前の淀川小屋まで我慢することにした。暑い中、なかなか厳しい。

再び登山道を歩き出す。ここで、2日前の脚のダメージがぶりかえしてきた。下り坂で筋肉が悲鳴を上げ、膝が笑う。トレッキングポールを出して、よたよたと前に進む。筋肉痛と喉の渇きを我慢しながら1時間半歩いて、ようやく淀川小屋に到着。

やっと水が飲める。水場はこちら→の標識に従って進むと、そこは沢というか、普通に川が流れていた。 

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やはり、これを飲むのね。喉の渇きには逆らえないので、ペットボトルを川の水で満たし、ごくごく飲んだ。うん、無味無臭。屋久島の美味しい水だ。たぶん沸かして飲んだ方が安全だろうけど、自分はがぶ飲みしても後で体調不良になることもなく、大丈夫だった。

水場から30mほど下流。ここの水も飲めそうだ。ちょっと昔の日本には、こんな川がどこにでもあったんだろうな。

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菓子パンを食べて燃料補給する。広場の隅でモソモソとパンをかじっている間、数組の登山者が通り過ぎたが、全員が真新しいウェアを着た若いカップルだった。カップルで宮之浦岳に登るのが流行ってるのか…?

ここからはあとちょっと。夕暮れ時の森もいいなぁ。 

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4時半頃、登山口に到着。時間があればヤクスギランドも見てみたかったが、今からは無理か。バイクの調子も心配だし。

バイクを駐めてある場所まで、また歩く。なかなかバイクが見当たらないので、盗まれたか?と不安になったが、そんなことはなかった(屋久島に泥棒はいない、たぶん)。

坂をバイクで下り始める。重力のアシストがある限り快調に進むのだが、少しでも登りがあるとスローダウンする。もう修理しないとだめだこれは。

途中、サル集団に遭遇。道ばたで、のんびり毛繕いしていた。エンジンをかけたまま近付いても逃げない。なぜかシカまで混じっていた。お互い興味はないらしい。 

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残照の差す山を眺めながら、山を走り下った。 

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