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波乱の幕開け

年末、車にスノータイヤを装着して長野の友達の家に遊びに行った。バイクでは難しい雪道走行が楽しみだったのだが、長野からの帰途の1月1日、雪道の恐ろしさを思い知ることになった。

上田から新和田トンネルを通って諏訪に抜ける峠道には、元日の夜明け前に降った雪が厚く積もっていた。下りの急カーブでフロントタイヤがヌルリと滑り、肝を冷やす。少しでもブレーキを踏むと、ABSがガリガリと作動していた。

昼頃、なんとか峠を下りて中央道に入り、ホッとしたのもつかの間、雪が激しく降り始めた(この時点でチェーン規制がかかっていた)。舞い散る雪で視界が遮られる。ノロノロと進むうち、路面が白くなってきて、みるみる10cmほど積もってしまった。

30kmほどで慎重に走っていたが、深い轍にハンドルが取られた瞬間、車が斜めを向いた。ハンドルを回して立て直そうとするも、フロントのグリップがまったく効かず、そのまま進んでコンクリート壁に接触。やってもうた〜

幸い、ノロノロ運転で車が流れていたので後続車と接触せずに済んだ。ハンドルを回して車線に復帰してみると、普通に走る。割れたバンパーがフロントタイヤに干渉して変な音がしていたが、運転には支障がなさそうだった。路肩は雪で埋まってるし、雪は八甲田山なみだし、助けを待つ気になれなかったので、そのまま最寄りのSAまで移動することに。

偶然、友達も同じSAに立ち寄っていたので、ガムテープを借りてバンパーを応急修理した。これで行けるところまで行こう。残り300kmくらいあるが…

夕方、名古屋まで来たところで、行く手の高速道路に長い渋滞が発生し始めた。ナビの忠告に従い、名神新名神を回避して名阪国道に入った。

夕暮れの中、また雪が降ってきた。しかもだいぶ激しい。チェーン規制もかかってないのに、大丈夫か?と思っていたら、案の定、渋滞になった。よし、ゆっくり進もう。

しかし、なかなか車が進まない。10分止まって、やっと動き出したと思ったら、10m進んでまた止まる。その間にも雪は降り続き、路面は新雪で真っ白になった。車にもどんどん降り積もる。止む気配がない。そして車は動かない。

このままだと雪に閉じ込められる?という可能性が現実味を帯び始めた。 

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ただ、直前にガソリンを満タンにしていたのと、スノーシャベルと冬用シュラフを用意していたので、最悪の状況になっても朝まで耐えられる自信はあった。ただひたすら、車の列が進むのを待った。

 待っている間、ずっと名古屋ローカルのFMラジオ局を聴いていたのだが、出口までの3kmほどを進む間に、番組が3個終わった。つまり、4時間くらいかかった。

 渋滞の原因は、上り坂にさしかかったときにわかった。路肩、走行車線、さらに追い越し車線にまで、坂を登れない車が累々と溜まっていた。中には放置された車もあったが、ドライバーはこの雪の中、どこに行ったんだろう。真冬に夏タイヤでチェーンも持たずにドライブに出かけると、こういうことになるんだなぁ…

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峠のトンネルを抜けて下り坂になると、一気に車が流れ始めた。ただ、路面に厚く雪が積もっているので、皆ノロノロ運転だ。

 この先の状況はさっぱりわからなかったが、逃げ道のない名阪国道を走るのはもう嫌だった。出口を出て、真っ暗な田舎道を走り始めた。

ナビを見ると近くに新名神のICがあったので、とりあえず向かってみた。名神なら大丈夫だろ!という妙な思い込みがあった……通行止めだった。どうも冷静さを欠いていた。iPhoneで調べればすぐわかったのに。

一面の雪に埋まったICが、水銀灯の黄色い明かりに照らされていた。さて、どうするか。

近くには、数台の車が止まっていた。帰るのを諦めて、車中泊するつもりなのだろう。でも、こんな何もないところで一夜を過ごすくらいなら、無理やりでも帰りたい。カーナビで下道のみのルートを検索して、走り始めた。到着予定時刻は夜明け前……

伊賀と甲賀に挟まれた辺鄙な土地なので、人家もまばら、街灯など全然なかった。通る車もほとんどいない。ハイビームに照らされた暗い雪道を走り続ける。西の空に、沈みかけた月が冷たく光っていた。

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峠を越えるときはひやひやした。前方は暗闇なので、カーナビの画面でカーブの形状を確認しながら、減速、加速を繰り返す。スピードメーターから目を離せない。最高速度は40km/h、坂道は30km/h、カーブは20km/h以下……。後から車にあおられたときは左ウィンカーを出して減速、ただし路肩に寄せすぎないように注意する……。この数時間の運転で、雪道ドライブにだいぶ慣れたと思う。

24時間営業のコンビニは、まさにオアシスに見えた。おにぎりを買って食べた(カップラーメンの方がよかったが、3分待つだけの精神的余裕がなかった)。

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ここでふと、全行程を下道で行く必要がないことに気付いた。iPhoneで高速の通行止め区間を確かめてみると、京滋バイパスの宇治西ICから西側は通行できそうだった。

がちがちに凍り付いた宇治市内を走り(驚いたことにバイクツーリング集団を見かけた)、京滋バイパスを経由して、名神に入った。

だだっぴろい5車線道路には、まったく車が走っていなかった。京都から東側が通行止めだから、車が来ないのだ。後にも先にも、こんなにガラガラの名神高速を走ることはもうないだろう。真ん中の車線を爆走する(でも80kmくらい)。

時刻は2時半を過ぎ、雪がなくなった安心感もあって、猛烈に眠くなってきた。眠気と戦っていると、視界に雪がちらつき始めた(幻覚)。

 やばいので、吹田SAに立ち寄る。この時間なのに、駐車場は車でいっぱいだった。どの車もエンジンをかけたまま。ナンバーを見ると、名古屋、尾張小牧、岐阜……通行止めで家に帰れず引き返してきた人たちが、夜明かししているようだ。自分はまだましな方かもしれない。

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3時半、帰宅。そして就寝。今年の初夢は覚えていない。

こんなに波乱に満ちた正月は初めてだった。平穏無事な正月よりも、記憶に長く残りそうだ。