入院記(2)

9/17

朝、医師がやってきて右膝のドレーン管を抜いた。直径1.5mmほどの管を引き抜くとき、膝の中をぬるりとミミズが通り抜けるような、何ともいえない不気味な感覚がして鳥肌が立った。

この日から、もうリハビリ開始だった。30年前に膝を手術したときは(膝内部の剥離骨折)、ギプスで固めたまま2か月も放置されたものだが、今は早期のリハビリで回復を早める方針なのだろう。前十字靱帯再建手術の患者は多いらしく、手作りのトレーニング資料も用意されていた。これから数か月、地味なトレーニングメニューを続けることになる。

まだ膝の曲げ伸ばしができないので、器具で膝を固定したままのトレーニングだった。移植した腱を筋肉で保護するために、膝周りの筋肉を鍛える筋トレを行う。また、膝を固定していると膝蓋骨(膝の皿)の動きが悪くなってスムーズな曲げ伸ばしができなくなるので、膝の皿を左右にぐりぐり動かしてマッサージしてやる。地味な作業だけど、これが重要らしい。最後に氷でがっつりとアイシングして終了。約1時間。

夕方には点滴も終わり、針が抜けた。やっと、体に刺さっていた管が全部抜けた。

 

9/18

車いすでのトイレにもだいぶ慣れてきた。車いすからベッドや便座に乗り移るのが危険なので、いちいち看護師の手を借りなければならなかったが、この日から担当看護師のお墨付きを得て、やっと1人でトイレに行けるようになった。自立への第一歩!

車いすには片脚を上げて乗せられるように、挙上板と呼ばれる板が取り付けられていた。この上に片脚を乗せたまま移動したり、トイレを使ったりする。常に片脚を突き出した状態なので、車いすの小回りがきかない。普通の車いす用のトイレでは引っかかって立ち往生してしまうので、広い介護便所を利用するしかない。これがフロアに2個しかなかった。このフロアは整形外科病棟なので、同じように片足を突き出したまま車いすに乗っている人がたくさんいる。結果、トイレ渋滞に悩まされることになった。

車いすに乗ってトイレに臨むの図。 f:id:charlie22:20151007180404j:image

 

午後、看護師さんの手を借りて、数日ぶりのシャワーを浴びた。手術痕を薄い防水シートで保護しているので、お湯をかけても大丈夫なのだ。このシートは透明の極薄フィルムで通気性があり、長期間貼り付けても問題がない。素晴らしい技術だ。手術後から顔すら洗えてなかったので、全身さっぱりして生き返ったような気分だった。

この頃からやっと気持ちに余裕が出てきて、読書を楽しめるようになった。最初に読んだのは、夢枕獏の『神々の山嶺』だった。