戦争の絵

兵庫県立美術館の企画展「1945年±5年 激動と復興の時代 時代を生きぬいた作品」を見に行った。引っ越しする前に、見ておきたかったのだ。

太平洋戦争でプロパガンダに利用された有名画家の戦争画から、前線に赴いた従軍画家のスケッチ、満州や台湾などの植民地を描いた絵画、そして大戦末期〜戦後に描かれた廃墟の絵など……思った以上にたくさんの絵があった。コンクリートで作られた彫像もあった。当時、金属が不足していたのでブロンズ像を作れなかったらしい。ある意味、貴重なものだ。

戦争画の展示室にあった解説によると、日本軍の調子がよかったのは大戦初期だけだったので、シンガポール侵攻など同じ主題の作品ばかり制作されたらしい。情けないというか、笑えるというか……

戦争画って、美術品としてどういう位置づけになっているんだろう。ふと気になった。大画面で緻密に描かれていて迫力はあるが、ちっとも心に響いてこない。たとえ藤田嗣治が描いたにしても。博物館や美術館の奥に収蔵されて、こういう企画展でしか日の目を見ないのだろうか。ちょっとかわいそうな気もする。

見ていて心に響いたのは、もっと地味で個人的な作品だった。満州に送られた兵士が家族に送った絵手紙、広島に原爆が投下された直後に教師が描いたスケッチ、水木しげるが復員前の療養中に描いた絵。その人だけの個人的な戦争が、その人だけの目線で描かれていた。すごく身近に、生々しく感じた。

今の時代なら、スマホで写真を撮ってSNSに上げるんだろうけど。絵という表現手段が使われたから、ここまで心に迫ってくるのだろう。絵を描きたいな、と思ってしまった。

(下の写真は、無駄にぐるぐる歩かされる美術館の階段 by Tadao ANDO)

https://www.instagram.com/p/BGQfJ5XPotk/