『君の名は。』(ネタバレあり)

8月31日、台風一過の青空。夏の終わりの太陽が輝く中、自分は朝から部屋にこもり、PCを前にして仕事に追われていた。日が傾いて、涼しい風が吹き始めた頃、いいかげん疲れてきて、一休みしてTwitterを開いた。すると、夏休み最後の日というお題で、色々な人がツイートしていた。

タイムラインを追ううちに、このツイートが目に入った。SF作家の小川一水さんが『君の名は。』を見終えた後のツイート。

「今年はいい夏だった!」あー、なんて良い感想だろう!やっぱり『君の名は。』観たいな。今日行くか?行けるか?次回18:35から、間に合うか?いやもう、イチかバチか行ってみよう!

駅前で渋滞にはまったものの、裏道を飛ばして、無事10分前に映画館に到着。平日だし席は余裕だろうと思っていたが、存外、混んでいた。中学・高校生らしき若者が多い。いいね、この夏休み感(しかし、後でこの地域の夏休みがとっくに終わっていることを知った)。隣の席は制服の高校生カップルだった。

田舎の女の子と都会の男の子の心が入れ替わってしまうラブストーリーというと、ちょっと、ありがちなラブコメ話に思えてしまう。と、油断していたら、手の込んだ仕掛けが幾重にも詰まっていた。意外な展開に呆然としたり、思わず手に汗握ったり。出会えそうで出会えない二人の行く末を真剣に追っていくと、最後に、あのラストシーンになるのだった。

あくまでも直球のラブストーリーを追求しつつ、誰もが楽しめるエンターテインメント作品に仕上がっている。このスタイルは、宮崎駿とも、細田守とも違う。説教臭さが全然ないのが素晴らしい。

あのラストシーン、どこか既視感があるなと考えていたら、ふと思い出した。村上春樹の短編小説『四月のある晴れた朝に100%の女の子に出会うことについて』。あの小説では、結局、少年と少女はすれ違ったまま永久に出会えない。それを「出会える」ようにする、「あの一言」を言えるようにするための大冒険を描いたのが、この映画なのだろう。

劇場を出るとき、ふとエントランスの上に貼られたポスターを見上げて、あっと声を出してしまった。これは、やられたね。

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