欲望の資本主義
先日、NHK BSで放映していた『欲望の資本主義』という番組。世界の気鋭の経済学者や投資家にインタビューし、グローバル化やAIの進化などの新しい社会状況を踏まえて、資本主義とは何か?を問いかける内容だった。
とても刺激的な内容だったので、もうちょっと詳しく知りたいと思って調べてみると、番組を書籍化した本が出版されていたので、買ってみた。
読み終わってからわかったのだけど、この本は1年前に放送された『欲望の資本主義 2017』を書籍化したものだった。僕が見た番組は『...2018』。どおりで、何か違うなと思った。
でも、これはこれで面白く読めた。
経済学に無知なのはもちろん、家計簿すらまともにつけたことがない人間なので、こういう本をレビューするのは無茶な気がするが、一応印象に残った箇所だけメモ。
■お金はタイムトラベルする
借金とは、未来の自分からお金を吸い取る行為。逆に貯金は、未来の自分への贈り物。このように、お金はタイムトラベルする。お金が時を超えることによって生まれるのが「利子」。
低金利だからと、気軽にバイクのローンとか組みそうになってしまうが、そんな風に考えると借金は怖い。金利が低かろうが高かろうが、負債を負うのは変わらない。気軽に借金したらアカンな。
■黄金の天井
世界の先進国が苦しんでいる低成長病。日本も国が借金をしまくって国内にお金を供給しているが、そんな無茶な手を使っても、ちょっぴりしか成長していない。その謎に対して、ある経済学者は「黄金の天井」という説を挙げていた。
すでに人口が減少に転じている日本は、経済が完全に成長しきって、もうこれ以上成長しなくても満足という「黄金の天井」に達しているのではないか。かつて思い描いていた豊かさを達成した、ある意味で理想郷のような状態ではないか。格差の問題はひどくなっているが、ほとんどの国民は十分に豊かな生活を送っているではないか……という説。
今は好景気とされているけど、実感として、これから皆がぱーっとお金持ちになる未来はなさそうな気がする。労働力の不足が大きいのではないだろうか。自分が属している会社も慢性的に人材不足だ。あと、円高が相変わらずしんどい。うちの会社の給料も、この先上がりそうにない。
現在の「ほどほど」の生活で、満足するしかない未来になるだろうな。
アメリカ企業が取り憑かれたように連呼している「イノベーション」。先日の番組でも、フランス人の経済学者が「イノベーション、しからずんば死」みたいなことを言っていた。AIが世界を席巻する前に(おそらく向こう10年以内)イノベーションを達成できなければ、サービス業セグメントの企業は仕事を失うことになる、らしい。グローバル化の波も大変だったが、AIはもっとやっかいな相手だ。
うちの会社でも新規事業を模索しているが、見渡す限りのレッドオーシャンの中で、効率よく稼げそうな画期的な商売など、なかなか見つかるものではない。
もっとも、あまり心配はしていない。会社の人たちも、目の前の仕事に忙しくて考える暇がない。世間ものんびりしたものだ。危機感がないのは、今の景気が良いからかもしれない。
サバンナの湖に暮らすワニの例え話を思い出す。サバンナが干ばつに襲われ、湖が干上がり、どんどん小さくなってきた。どうするか。雨季の到来を期待してそのまま待つか、思い切って外に飛び出して、新しい湖を探すか。
真剣に考えた方がいいだろう。と思う。