見逃していたアニメを今さら見てみる

9月も半ばを過ぎて、秋らしい日が増えてきたなと思っていたら、今日は夏日だった。朝から激しい日差しがガンガン照りつける中、懸案だったクルマの車内清掃と洗車(機械任せ)をこなし、1か月放置していた汚れたランニングシューズを洗った。その後で、この長すぎるブログ記事を書き進めた。

明日から涼しくなるようだが、来週末はまた暑くなるとの予報。平成最後の夏は、まだまだ終わらない。

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去年の春にFire TV Stickを購入して以来、暇つぶしに利用してきたAmazonプライムビデオ。

あるとき、プライムビデオのメニューをつらつらと眺めていると、見たことのないアニメがたくさん配信されているのに気がついた。こうして見ると、ネット上でよく名前が挙がる過去の大ヒット作を、自分はほとんど見ていない。世界的に人気があり、「ミーム」に近い扱いを受けているタイトルの数々。

むやみに美少女が出てきたり、特に理由もないのに主人公がモテまくったりするアニメは、あまり好きではない。見ていて、いたたまれない気持ちになってしまう。でも、先入観で排除してしまうのは、間違った態度のように思えた。

プライムビデオによって、非常に低コストでアニメを見る環境が整った。今こそ、自分の認識を改めるチャンスだ。

そのようなわけで、「見逃していたアニメを今さら見てみるキャンペーン」を1人で始めることにした。ただ、「ゲーム・オブ・スローンズ」と平行して見ていたので、結局そんなに多くの作品は見られていない(こちらはシーズン1〜5まで見終えた)。

中には今ひとつ楽しめない作品もあった。やはり、主人公に共感や感情移入ができないと、見ていてつらい。世代的・年齢的な要因が大きいと思う。悲しいが、まあ仕方がない。

今回は、そんな自分にも大いに楽しめたアニメの中から、ベスト3を選んでみた。

 

第3位: BLACK LAGOON(2006年)

このアニメはネットの評判が良かったので知っていたが、エログロ・バイオレンスは嫌だなぁと思って手が伸びなかった。しばらくして、元住吉のカレー屋の漫画コーナーで原作を見つけて、試しに読んでみたら面白かった。このカレー屋でちょっとずつ単行本を読み進めていたのだけど、引っ越したので元住吉に行くこともなくなり、漫画も止まってしまった。それから時が過ぎて2017年。Amazonプライムのメニューに、この作品の名前を見つけた。

原作に忠実なシリアスなストーリーが、テンポの良い演出で進んでいく。絵はよく動くし、アクションシーンもわかりやすくて楽しい。銃声が小気味良い、アメリカンな娯楽作品として見事にまとまっている。

荒唐無稽なハリウッド映画のフォーマットを踏襲しつつ、国って何だろう、人間って何だろう、生きるって何だろうと問いかけてくる。作中の国際情勢は、今となっては時代遅れになってしまったけど、不思議とそれほど古さを感じない。描かれている人間の苦しみは、時代を超えて共通のものだと思う。

あと、美術が美しい。舞台となる架空の都市は、赤道直下の東南アジアにある。青い空と白い雲、強烈な日差し。夜になっても街に漂う熱気。まばゆい朝日と、立ち上る水蒸気。どの場面でも、光がリアルに描かれているのが印象的だった。

男性よりも女性の方が(物理的に)強いのがこの作品の特徴でもあるけど、アニメは原作よりもさらに女性が生き生きと描かれているように感じる。エンディングアニメーションを見たとき、これ作った人は絶対にフェミニストだなと思った。でも、女性が見たら意見が違うのだろうな。

 

第2位: Fate Zero(2011年)

Fate」シリーズは最も気になっていたアニメだった。あらすじを読んでも内容がいまいち把握できなかったが、有名な作品だからコアなファン層が存在するし、海外でも人気があるようだ。アニメシリーズはいくつかあったが、違いがよくわからなかったので、とりあえず時系列順に見てみることにした。作中の時系列で最初の作品であり、オリジナルの「Fate」の前日譚にあたるのが、この「Zero」だ。

後で知ったのだけど、これは「Fate」の本流からはだいぶ外れた作品だった。オリジナルの「Fate」は、平凡な少年がある日突然ファンタジーな戦いに巻き込まれて、美少女たちと協力して強大な敵に立ち向かうという中二的なストーリーだけども、「Zero」はまったく雰囲気が違う。

 のっけから、小難しい台詞がみっちり詰まった密度の高い物語が始まる。美少女どころか、渋い声のオッサンばかり出てくる。暗く陰惨な戦いが繰り広げられ、誰も幸せになれないハードな展開。登場人物それぞれの人間性が深く描かれ、物語と結びついていく。とても面白い。

この作品における「セイバー」アルトリア・ペンドラゴンの造形は、「アーサー王は、実は美少女だった」という無茶な設定にも説得力を感じさせてくれる。王としての矜恃を備え、信義に厚く、毅然として美しい。本意ではない戦いの中でも自らの正義を貫こうとして、苦悩する。(黒スーツ姿も良い。)

正義とは何か、という抽象的なテーマを軸にして物語は進み、数多くの犠牲を経て、苦い結末を迎える。

まちがえて異端な作品から見てしまった「Fate」だが、自分としてはそれがかえって良かったかもしれない。正当な?アニメシリーズも見てみたが、Zeroほどの奥行きや深みを感じられず、今ひとつ入り込めなかった。そちらを先に見ていたら、Zeroを見ようという気にならなかっただろう。

 

第1位: STEINS;GATE(2011年)

秋葉原を舞台に、美少女に囲まれた中二病オタク男が大活躍するSFアニメ……ということで、これまでまったく眼中になかった作品。今年、続編が制作されたと知り、そんなに人気があったのかと思って見てみることにした。

(こちらはネットに残っていた公式動画。時代を感じる。)

主人公の病的なまでにクセの強いキャラクターと、やたらと多い美少女たちの描写についていけず、最初の方で挫折しかけたが、3話目くらいから面白くなってきた。無茶苦茶な主人公も、声優さんの超絶演技によって違和感がなくなってきた。すごい。

実を言えばタイムマシンがテーマということも知らずに見始めたのだけど、偶然にも同じ時期にこんな本を読んでいた。

 

タイムマシンのつくりかた (草思社文庫)

タイムマシンのつくりかた (草思社文庫)

 

 

なので、タイムマシンの設定に注目しつつ見ていた。

いきなり物語の冒頭で、科学者がタイムマシンを否定してしまうのが上手い。タイムマシンが科学的に荒唐無稽な存在であることを強調しつつ、「タイムトラベルは無理……だけど、できちゃった」という話の持って行き方によって、非現実的なストーリーに力ずくで説得力を与えている。

限定的タイムトラベルという、なかなか渋い設定にうならされたのだけど、後の方になるとストーリーの都合で何でもありな感じになってしまって、やや残念。最後まであれで行ってほしかった。

物語の最初の方は、主人公が美少女たちと平和な日常を送りながら、タイムマシンで実験を重ね、世界をみみっちく改変していく。ほのぼのしたアニメだなと思ってのんびり見ていたら、突然の急展開。いつもの日常が破壊され、恐ろしい現実が襲いかかる。主人公は大切な人を救うために、時を超えて駆けずり回る。美少女たちの秘密が明らかになり、物語の全体がつながっていく。

ちょうど夏休みで実家に帰っていてヒマだったせいもあり、iPadで何時間もぶっ続けで見てしまった。これがAmazonプライムビデオの利点でもあり欠点……。

終盤には、とてもロマンティックな展開が待っていた。最初の方のドタバタ日常アニメと比べたら、信じられないほど切実で、胸を突かれるような。そうだ、タイムマシンSFといえば欠かせないのが、ロマンスだ。古くはジャック・フィニィのSF小説から、「バック・トゥー・ザ・フューチャー」「時をかける少女」まで(これも古いけど)。原作者がこの伝統?を意識して、それを踏襲したのか、それともタイムマシンが登場する物語は不可避にロマンスを内包してしまうのか。いずれにせよ、この作品のロマンスは切なくて爽やかで、とても良かった。

今となっては、作中に登場する携帯電話がガラケーばかりということや、「2ちゃんねる」ワードが多用されている点に時代を感じてしまう。けっこう違和感がある。まだ見ていない人には、2010年が遠い過去になるまでに見ておいてほしい。

新作の「シュタインズ・ゲート ゼロ」は、もうしばらく時間をおいてから見てみようと思う。楽しみ。