彼岸へ

9月23日、秋分の日。朝はひんやりと肌寒いくらいだったが、日が昇ると急に蒸し暑くなってきた。また夏が戻ってきた。

この日は最近出入りしている俳句会の主催者からお誘いを受けて、埼玉県日高市の「巾着田ヒガンバナ群生地を見に行ったのだった。

巾着田に行く前に、近くの日和田山に登った。標高300mほどの里山ながら、岩登りもあってなかなか登りがいのある山だった。平地なので展望も良い。 

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巾着田の独特の地形もよく見えた(上の写真中央、緑に囲まれた馬蹄形の土地)。ぐるりと湾曲した高麗川の流れに囲まれた地形が上から見ると「巾着」に見えることから、その名がついたらしい。なんでも、高句麗から戦乱を逃れて来た渡来人が拓いた土地だとか。

上から見るとヒガンバナで一面赤く染まっているのかと思いきや、緑の芝生と駐車場しか見えなかった(群生地があるのは川沿いの林の中だった)。

お昼に下山して現地に向かうと、すごい人混みだった。狭い道を行列で進む。朝の電車が相当な混みっぷりだったので、覚悟はしていた。近年、西武鉄道が盛んに宣伝したせいで有名観光地になりつつあるらしい。

ただ、高麗川の緑豊かな眺めのおかげで、悪い気分ではない。川を渡ってくる風も涼しい。しばらく川沿いを歩き、入口で300円を払って有料ゾーンに入ると、もう一面にヒガンバナが広がっていた。

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あたり一面をヒガンバナが埋め尽くす風景。毒々しいまでの「赤」と鮮やかな「緑」のコントラストは、美しいと言うより「凄い」という印象だった。 

見物客の中には外国人の姿も多かった。皆、屈託のない笑顔で、ヒガンバナを背にしてスマホで自撮りしている。日本人はヒガンバナに「死」のイメージを重ねて、その赤さに不気味な印象を抱くけれども、文化的な背景が異なる外国人にとっては単なる「赤い綺麗な花」なのだろう。

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そうはいっても、ヒガンバナに顔を寄せてポーズをとる外国人の女の子を見ていると、違和感を強く感じてしまった。まるで、生首と記念写真を撮っているような……

夕方近くになり、空が曇ってくると、木立の下に広がる赤い花畑は暗さを増して、血のような色合いになってきた。観光客の雑踏がなければ、すぐに「あの世」につながってしまいそうな、凄まじい、異界めいた風景だった。

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