『獄友』

だいぶ書くのが遅くなってしまった。11月25日の話。

『獄友』と書いて「ごくとも」。日本の冤罪被害者を描いたドキュメンタリー映画を観た。

http://www.gokutomo-movie.com

監督の金聖雄さんは、冤罪を扱った映画をこれまで2本制作し、これが3作目とのこと。僕はまったく知らなかったのだけど、友達がこの作品に共感し、今年の春からボランティアとして支援活動をしていた。

地味な題材、そしてドキュメンタリーということで、当初は上映される機会も少なかったと思うが、支援者たちの努力の結果、都内各所の公民館で上映会が開催されるようになったようだ。

僕も最初はさほど興味がなかったのだけど、その友達があまりにも熱心に頑張っているので、観てみたくなった。ちょうど、家から自転車で行ける距離の市民ホールで上映会が開かれたので、友達からチケットを買い、観てみることにした。

登場するのは、5人の冤罪被害者。昭和の名だたる冤罪事件に巻き込まれ、17年から48年もの間、何もしていないのに刑務所に閉じ込められた人たちだ。

冤罪被害者を救済する活動のために集まる彼らは、お互いを「獄友」と呼び、適度な距離を保ちながら支え合う。失われた時間を嘆くのではなく、取り戻した人生を前向きに生きようとする姿は、意外なほど明るいのだった。

驚いたのは、5人のうち2人が、釈放後に結婚していたこと。なんとなく、冤罪被害者というと「人生を破壊された人たち」というイメージがあったのだけど、めげずに新しい人生を立ち上げた人もいるのだ。

中でも印象に残ったのは、1967年に発生した「布川事件」で犯人に仕立て上げられた、桜井昌司さんの話だった。

絶望的な状況の中で、「不運と不幸は違う、不運であっても幸せになれる」という信念を貫き、29年も続いた獄中生活でも100%幸せに生きることを目指した。刑務所の文化活動として楽器の演奏を覚え、詩を書き、曲を書いた。釈放後もその信念を貫いて、家族を持ち、家を建て、ついには獄中で作詞作曲した曲を集めてCDデビューを果たした(さだまさし風、歌もけっこう上手い)。

もちろん、刑務所の生活は精神的にもきついもので、前向きばかりではいられない。29年も閉じ込められたら、どんな人でもおかしくなる(釈放後も数年間は衝動的に家の外に飛び出しそうになったそうだ)。ただ、他の受刑者とは決定的に違う点があった。それは「やっていない」こと。

「やった」受刑者は、被害者が夢に出てくるなど、良心の呵責に苦しめられている人が多かったという。何も「やっていない」ぶん、まだ楽だった、ということらしい。

もっとも、桜井さんのように強い精神で人生を歩んでいる人だけではない。自由になった後で、生き方に迷っている人もいる。病気で亡くなった人もいる。そして、死刑囚として半世紀も獄中に捕らわれて、心が壊れてしまった人もいる。この映画は、この国で起こっている冤罪がどんな結果をもたらすのか、ありのままに描いている。

冤罪は醜く、恐ろしい。今も獄中で苦しんでいる人たちが、一刻も早く解放されることを願う。