立川イエスタデイ

11/12、月曜日、特に予定のない休日休み。

からりと晴れた秋晴れで、どこかに出かけたかったけど、体が疲れていてあまり動く気にならない。久しぶりに、映画を観に行くことにした。

週末にやり残していた掃除・洗濯をやっつけた後、電車で立川へ。すぐに着いた。立川で映画を見るのは初めてだが、この街には全国的にも有名な(らしい)独立系映画館である「シネマシティ」があるのだった。

この映画館の売りは、「音の良さ」とのこと。音なら大型シネコンの最新音響システムの方が良いのじゃないのか?と思っていたのだけど、一度体験してみることにした。

しかもこの映画館、会員になると料金が割引になり、平日なら1000円で映画を見られる(通常料金1800円)。これはお得だ。さっそくネットで会員登録し、チケットを購入した。最近は大手シネコンでなくてもネットに対応しているのだな。便利。

選んだ映画は、今年封切りのイギリス映画「イエスタデイ」。音楽がテーマの映画だから、いい音で聴きたい。

yesterdaymovie.jp

 

今の立川は、知らずに来ると驚くほど発展している。巨大な商業施設が建ち並び、人も多くて賑わっている。でも今日は月曜日、週末と比べると落ち着いた感じがした。映画を見る前に、街をぶらぶらしてみた。

映画館の横にある大型書店のカフェで、昼食。清潔で気持ちのよいお店だった。サンドイッチもコーヒーもおいしかった。週末は混みそうだけど、また来よう。

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ミックスサンドイッチ

小一時間ほどボーッと過ごして頭を休めた後、映画館へ。

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シネマシティ・ツー

モダンな建物だが、中に入ると結構くたびれていて、あちこちに古さを感じる。このちょっとくすんだ感じが、地方の映画館らしくて懐かしい感じがした。昔よく通った、神戸の小さな映画館を思い出した。たださすがに大東京、この「ツー」だけで5スクリーンもある(「ワン」は6スクリーン)。

平日の午後2時、しかもややマニアックな映画なのに、席は半分ほど埋まっていた。これは作品の力なのか、東京という土地柄なのか、それとも平日1000円が効いているのか。

座席数180の小ぶりな劇場。一般的な映画館なら、正面の壁に張り付いたスクリーンの脇にスピーカーが埋め込まれているものだが、この映画館は壁からスクリーンが浮いていて、その両脇に巨大なスピーカー(Mayer Sound社製)がむき出しで置かれている。そしてスクリーンの下には巨大なセンタースピーカー。公式サイトの説明によると、音響の専門家が作品ごとにスピーカーを綿密にセッティングしているらしい。期待が高まる。

この映画は……舞台は現代のイギリス。売れないシンガーソングライターが、ある日、交通事故に遭う。病院で目覚めた彼は、奇妙なことに気付いた。そこは「ビートルズが生まれなかった世界」だったのだ。やがて彼は、とんでもない計画を思いつく。

この映画の良さは、主人公が徹底的に「さえない男」であることだ。ビートルズの名曲を巧みに歌い上げて、成功への階段を駆け上がるさなかも、それは変わらない。とにかく、「さえない感」が半端ない。生気のない目にたるんだ頬、ぽかんと開いた口、きたない無精ひげ、ぼさぼさ頭にヨレヨレのシャツ。常に弱気で優柔不断。

主人公を見守るヒロインも特別な美人という印象ではなく、「普通の女の子」という感じ。

この「さえない男」と「普通の女の子」をめぐる物語という構造が、とてもイギリス映画らしい、あるいは「ビートルズ映画」らしいなぁと思った。

このストーリーを、イギリス人によるアメリカ的価値観への異議申し立て、という風にも解釈できると思う。キャスティングとか演出とか、いろいろなところにイギリス人のプライドを感じた映画だった。

僕自身は、ビートルズの楽曲は好きだけど、それほど詳しい訳でもない。聴いたことがないアルバムもある。マイナーな曲とか出てきたらわからないなと心配していたが、杞憂だった。演奏されるのは、誰でも知っている名曲ばかり。しかも、映画のストーリーに合わせて、その場面にふさわしい曲が出てくる。

 当然、ビートルズのオリジナルがそのまま流れるわけではないのだけど、バンドで演奏される名曲のアレンジがなかなか良かった。ライブのシーンを見ながら、現代にビートルズが新人バンドとしてデビューしたらこういう感じなのかな、と思った。オリジナルじゃなきゃヤダ!という人も、エンドクレジットでたっぷり聴けるのでご安心を。

期待していた音響は、満足できるものだった。大音量でありながら、クリアで生々しい音。爆音でも耳が痛くならず心地よい。あれは、良いオーディオの音だ。

平日休みを気持ちよく過ごせた午後だった。