おしゃれメガネ

先日、たまたま仕事が薄い日があり、急遽有休を取った。

映画を観に行くつもりで立川に行ったが、上映時間まで間がありすぎて何だか面倒になり、モノレールに乗ってショッピングモールに行くことにした。

 

多摩モノレールに乗るのは初めてだった。平日昼間でガラガラかと思ったら、意外と乗客が多かった。さすが東京だな。よく晴れていて、冬の富士山がくっきりと見えた。

平日のモールは人もまばらで、静かだった。清潔で落ち着いた雰囲気。こういう匿名的な空間で、ひとりで影のようにぶらぶらするのが、僕にとって一番楽しいことかもしれない。

ぶらついていると、いつも利用しているメガネ屋チェーン店があるのに気付いた。そこでふと、最近になってコンタクトレンズの度数を変えたのを思い出した。それに合わせてメガネも調整しようと思っていたのだ。

ふらりと店に入って、店員と話しているうちに、新しいメガネを注文してしまった。本当は手持ちのメガネのレンズを入れ替えるだけでよかったのだけど、予備のメガネを持ってきていなかった。裸眼のボワボワの視界のまま家に帰るのは無理……ということで、新しいのを購入。

ド近眼の僕は、普通にメガネを作るとレンズがとんでもなく分厚い「ハカセ」的なメガネになってしまうので、なるべくレンズサイズが小さいフレームを選ぶのだけれども、今回は違う雰囲気のを作ろうと考えた。選んだのは、いわゆるジョン・レノン風の、オシャレな丸眼鏡フレーム。

ここで、ド近眼のメガネ選びの罠にはまった。自分のメガネを外さないと新しいメガネを試着できないが、自分のメガネをかけないと鏡の中の自分の顔が見えない。いつもはコンタクトをつけてメガネを試着するのだけど、今回はその準備がなかった。

まあいいや。たぶん大丈夫だろう。

 

数日後、仕事を終えた後に、できあがったメガネを取りに行った。ワクワクしながらメガネをかけてみると……鏡の中にいたのは、疲れ切ったおっさん。ものすごい老け込んで見える。仕事終わりなので疲れているのは仕方ないが、ここまで似合わないとは。

やっちまったーと思いながら鏡を眺めていると、衝撃の事実に気が付いた。このメガネだと、うちの父親とそっくりに見える。思わず苦笑いした。そうして、しばらく父のことを考えていた。

その日の夜、夢に父が出てきた。若い頃の気難しい父ではなく、年を取って丸くなった今の姿。

まだまだ、元気でいて欲しいと思う。