不気味な食物

 鼠の好物は焼きたてのホットケーキである。彼はそれを深い皿に何枚か重ね、ナイフできちんと4つに切り、その上からコカ・コーラを1瓶注ぎかける。
 僕が初めて鼠の家を訪れたとき、彼は5月のやわらかな日ざしの下にテーブルを持ち出して、その不気味な食物を胃の中に流し込んでいる最中だった。
「この食い物の優れた点は」と鼠は僕に言った。「食事と飲み物が一体化していることだ。」

村上春樹関連のイベントで、余興としてこの「食物」を再現してくれた。その味は、まさしく「食事と飲み物の一体化」。つまり、そのままの味だった。

How to cook pancakes in Coca-Cola 1

How to cook pancakes in Coca-Cola 2

How to cook pancakes in Coca-Cola 4

カリッと焼き上がった熱いホットケーキに冷たいコーラをかけることで、みごとに互いの長所が打ち消され、生ぬるくて甘ったるいドロドロした食物になる。

何度も読んだ小説だが、まさか実際にこれを食べることになるとは思わなかった。人生というのは不思議だ。ほんとに、すこし感動した

もう二度と食べたくないけど、ね。