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『ぼくは本屋のおやじさん』早川義夫

ぼくは本屋のおやじさん (就職しないで生きるには 1)

あらゆるものをAmazonで買うことが生活の一部となり、電子書籍にも手を出した今、この本が新鮮に感じる。

 

ミュージシャンとして生きていくことを諦め、好きな本に囲まれて静かに暮らしたいと本屋を始めたら、発注・入荷・返本の作業が大変すぎて本を読む暇がなくなったという著者。非効率的すぎる出版書籍業界に対する愚痴を綴りつつも、本屋を経営する上で避けて通れない現実的な問題をていねいに取り上げている。まだ半分しか読んでないけど(汗)、車がないのでリュックをしょって神田に本を仕入れに行く話とか、立ち読み客に対する貼り紙警告の効果とか、ディテールが面白い。

 

初版が82年なので内容が古いかと思いきや、今でもそれほど変わらないと感じる所もある。書店で本を取り寄せると2週間かかるのはなぜか、とか。

 

今日読んでいて気になったのは、お客のためにも本屋の経営的にも、売れ筋の新刊本をできるだけ多く並べるのが良い、と書かれていること。リアル書店では本を陳列できる棚に物理的限界がある。売り上げを稼ぐには、売れる本をできるだけ多く並べ、売れない本を迅速に返本する必要がある。ところが個人経営の零細書店には売れる本がなかなか配本されず、神田に出向いて取り次ぎや出版社と直に交渉して……と、苦労が語られる。

 

ところが、実際には売れ筋じゃない本ばかり置いている本屋がある。最近は書店員が好みの本を並べるような店が増えてきた(この本を買ったのもそういう本屋だった)。今日も、渋谷の神山町でそういう本屋を見つけた。ゆったりとしたスペースに本が平置きで並べられ、棚に入っている本もこちらに表紙を向けて置いてあるという贅沢なつくり。これで商売成り立つのかなと思ったが、一緒に売っていた雑貨で稼ぐのかもしれない。

 

新刊書ばかりが幅をきかすギラギラした本屋よりは、地味な「良書」を置いている本屋の方が居心地がいいという人は、たくさんいるだろう。表紙を愛で、手にとって重量を感じ、開いて文字を眺める。Amazonのようなネット書店が一般化した今、リアル書店が生き残る道は、この方向しかないんじゃないかと思えてきた。

 

でも、街の本屋がこういうオシャレ書店ばかりになってもつまらないな。小学生が漫画を何時間も立ち読みできるような本屋も、街にひとつはほしいものだ……

 

追記:読み進んだら、「良書を置く本屋」について疑念を呈していて、「それぞれの人がそれぞれのものを自由に選び出せるような店づくりをすることだけが、売り手側の仕事ではないだろうか」と書いてあった。本を売る仕事というのは、忠実な本の運び屋であるべきだと。でもそれだと、Amazonになってしまうような気が…