Three body problem

曇天・曇天・また曇天。太陽が見えない日々。

気温も低くて、長袖を着る始末。夏はどこに行ったんだろうかと嘆いていたら、太陽が出てこないまま蒸し暑さだけが増してきた。嫌な夏の感じ方だ。

今日ようやく、週間天気予報に晴れマークが出てきた。来週から、いきなり真夏が始まりそうだ。

 

先週、読んだ本。

三体

三体

 

数年前から「中国にSF超大作が出現した」と話題になっていた作品。英訳されて米国で出版されるや、世界で最も権威のあるSF文学賞ヒューゴー賞」を獲得した。そんなすごい作品が、なぜか日本では翻訳されておらず、もどかしい思いをしていたのだけど、ようやく早川書房から出版された。

僕が吉祥寺のジュンク堂で手に入れたときには、平置き台に2冊しか残っていなかった。飛ぶように売れているらしく、各書店のランキングでも上位に食い込んでいる。海外SF小説としては異例の大ヒットだろう。

内容は、近未来の中国を舞台にしたファーストコンタクトもの。文化大革命の暗い歴史を背景にしながら、宇宙規模の壮大なストーリーが展開される。次々と起こる奇想天外な事件から、意外な真相が浮かび上がり、最後には途方もないスケールの真実が明らかになる。

ストーリーも非常に面白いのだけど、登場人物の心理を丁寧に描いていたり、自然の風景を詩的に描写したりしているのが魅力的だった。作者のインタビューによると、小松左京の影響を強く受けているとのこと。たしかに、人間くさい登場人物がたくさん出てくるのは小松左京っぽい。

詩的な自然描写には、中国の伝統を感じた。表現のやり方が、英米文学とも日本文学とも違っている。翻訳でどの程度変わっているのかわからないけど、「中国的」と言われれば納得できるような感じ。昔読んだ武侠小説をちょっと思い出した。

主人公(北京在住の男性科学者)の考え方や価値観も、日本人とはだいぶ違うように思う。たとえば「社会階級」の存在を当たり前のものととらえる意識。エリートである彼は、下層階級の人々と一切交わらず、距離を置いている。ちょっと違和感がある。ただ、小説にはそうした人々も別のパートで登場するので、作者自身はそうではないのだろう。個人的には、現代中国のエリート層の生活を垣間見るような感じが面白かった。

現在、アメリカではこの作品を連続ドラマとして映像化する企画が進められているらしい。あのシーンやこのシーンはどう映像化するのだろう……楽しみだ。アメリカ人が中国人社会をどう描くのかも興味がある。

続編は、来年翻訳されるとのこと。また、首を長くして待つことになりそうだ。