地球の歩き方(リハビリ8〜11週目)

手術から2か月以上経っても、膝をまっすぐ伸ばすのに苦労していた。

手術から1か月間、移植した腱を保護するため膝を10度曲げた状態で固定していた。このときに筋肉が固まってしまい、伸びにくくなっていた。

1kgのアンクルウェイトを買い、仕事の合間にベッドにうつぶせで寝そべって、ウェイトの重みで強制的に膝を伸ばすことにした。すねの外側の筋肉がピンと張って、じわじわと伸びていく。気持ち良いのか悪いのかわからない、妙な感覚。そうやって伸ばしても、仕事で小一時間座っているだけで筋肉が縮こまって元に戻ってしまうので、また伸ばす。その繰り返し。

また、PT(理学療法士)の先生の助言を受けて、脚のストレッチを取り入れた。自分は子供のころから前屈できないくらい体がかたいのだが、それも脚の筋肉の固さとなって悪影響しているらしい。嫌々ながら前屈(の手前の状態)で筋肉を伸ばしていく。

手術から3か月目となる12週を目前にして、やっと左右の脚が均等に伸びるようになった。

12週目にはリハビリ通院が終了する。その卒業(?)を前にして、歩き方の指導を受けた。

そして初めて気付いた。自分の「歩き方」が間違っていたことに。

まず言われたのは、「膝を伸ばして歩きなさい」ということ。伸ばしてるよ、と思ったのだけど、歩行のプロセスをひとつひとつ意識してみると……片足を前に振り出して、踏みしめ、その足に体重を乗せる……その過程全部で、膝が曲がっていた。

これは衝撃だった。人間にとって基本中の基本の動作である「歩く」ことが、今までまともにできていなかったのだ。

もともと脚の筋力が足りなかったのが原因のようだ。歩行のプロセスの中で、膝を伸ばしたまま片足に全体重をかけてバランスをとる瞬間、グッと腿の筋肉で支えてやる必要がある。その力が弱いのでバランスが取れず、つい膝を曲げてしまう。あと、慢性的に膝痛があったので、膝をかばい気味で歩く癖がついていた、というのもある。

最初は、どうやったら膝を伸ばしたまま歩けるのか理解できなかった。PTの先生に改めて教えを請い、文字通り一挙手「一投足」を教えてもらった。カギは体重移動だった。今までよりも早いタイミングで体重を前に移動しなくてはならない。

30分ほど練習して、ぎこちないながらもなんとか「正しい」歩き方ができるようになった。今まで使わなかった筋肉を使ったせいか、すごく疲れた。特に尻のあたりの筋肉が大活躍するので、翌朝ケツが筋肉痛になってしまった。

「正しい」歩き方はまだ疲れるが、今までの歩き方よりも体重移動が異様にスムーズに感じる。今まで、えっちらおっちら運んでいた体が、スッスッと勝手に進んでいくような感覚。歩くという行為が、こんなに新鮮に感じられるとは思わなかった。

まだ膝痛がある(筋力不足が原因とのこと)のでゆっくりとしか歩けないが、新しいことにチャレンジできるのは楽しい。早く筋力をつけて、颯爽と歩けるようになりたい。

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