東…京…

時間差日記。

9月10日、会社の移転を手伝うため東京へ。新幹線を降りたとたん、むわっとくる湿気。カラリとした信州の暑さとはまるで違い、戸惑った。すぐに汗だくに。人の多さや街の騒々しさにもうんざりした。あー、早く帰りたい……オレ、信州人になりかけているな。

会社から遠いホテルしか取れなかったので、地下鉄とJRを何度も乗り継いだ。そのたびに、長い階段を上り下り。クルマ移動が当たり前の田舎よりも、東京の人の方がよく歩くので健康的だという話を聞いたことがあるが、まったくその通りだ。翌日も美術館に行ったり、買い物に行ったりで、乗り継ぎエクササイズを存分に体感。翌日、脚が筋肉痛になった。

東京都美術館で開催されていた写真展「トーマス・ルフ展」。最初、コンセプチュアルな作品が多くて難しいなと思っていたが、後半にかけて感覚的・挑戦的な作品が増えてきて、とても惹き付けられた。写真を撮らなくても写真家であり、素晴らしい作品を生み出せるという驚き。

ミラーレスカメラを手放して1年近く経ち、そろそろ良いカメラを手に入れようと思っていた矢先に、この展覧会に出会えたのはよいタイミングだった。何を目的に、写真を撮るのか。そのために必要なカメラは何か。そもそも必要なのか。

その後、新宿西口の中古カメラ店に行ってみたが、ピンとくるカメラは見つからなかった。写欲を刺激してくれるカメラがない。疲れて電気街をうろつくうちに、予定外のモノを買ってしまった。まぁ、前から目を付けていた品ではあったが……

複雑な見た目に反して、びっくりするくらいシンプルな腕時計。

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湿原・古本茶店

友達を連れて、1か月ぶりに池の平湿原に行った。標高2000mの夏は、完全に終わっていた。湿原の花はめっきり少なくなり、あれほど元気に飛び交っていたマルハナバチも姿を消した。訪れる人の数もまばら。

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エゾリンドウは元気に咲いていた。このハチ、図鑑で調べても同定できず。昆虫は難しいね。

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マツムシソウジャノメチョウ。

 

下山し、温泉に行った後、海野宿に最近オープンしたブックカフェを見に行った。採算度外視で、趣味でやっているような感じのお店だった。書籍の趣味は良いし、落ち着く空間だった。

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でも、もうちょっとお客がいた方が入りやすいかな(^_^;)

『君の名は。』(ネタバレあり)

8月31日、台風一過の青空。夏の終わりの太陽が輝く中、自分は朝から部屋にこもり、PCを前にして仕事に追われていた。日が傾いて、涼しい風が吹き始めた頃、いいかげん疲れてきて、一休みしてTwitterを開いた。すると、夏休み最後の日というお題で、色々な人がツイートしていた。

タイムラインを追ううちに、このツイートが目に入った。SF作家の小川一水さんが『君の名は。』を見終えた後のツイート。

「今年はいい夏だった!」あー、なんて良い感想だろう!やっぱり『君の名は。』観たいな。今日行くか?行けるか?次回18:35から、間に合うか?いやもう、イチかバチか行ってみよう!

駅前で渋滞にはまったものの、裏道を飛ばして、無事10分前に映画館に到着。平日だし席は余裕だろうと思っていたが、存外、混んでいた。中学・高校生らしき若者が多い。いいね、この夏休み感(しかし、後でこの地域の夏休みがとっくに終わっていることを知った)。隣の席は制服の高校生カップルだった。

田舎の女の子と都会の男の子の心が入れ替わってしまうラブストーリーというと、ちょっと、ありがちなラブコメ話に思えてしまう。と、油断していたら、手の込んだ仕掛けが幾重にも詰まっていた。意外な展開に呆然としたり、思わず手に汗握ったり。出会えそうで出会えない二人の行く末を真剣に追っていくと、最後に、あのラストシーンになるのだった。

あくまでも直球のラブストーリーを追求しつつ、誰もが楽しめるエンターテインメント作品に仕上がっている。このスタイルは、宮崎駿とも、細田守とも違う。説教臭さが全然ないのが素晴らしい。

あのラストシーン、どこか既視感があるなと考えていたら、ふと思い出した。村上春樹の短編小説『四月のある晴れた朝に100%の女の子に出会うことについて』。あの小説では、結局、少年と少女はすれ違ったまま永久に出会えない。それを「出会える」ようにする、「あの一言」を言えるようにするための大冒険を描いたのが、この映画なのだろう。

劇場を出るとき、ふとエントランスの上に貼られたポスターを見上げて、あっと声を出してしまった。これは、やられたね。

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サッカー熱

夕食後にタブレットTwitterを読んでいて、ふと、今夜はサッカーワールドカップ最終予選の初戦をやってることを思い出した。TVをつけてみると後半15分、1-2のビハインド。画面の左下に「初戦で負けた場合の勝率→0%」なんてテロップを出して煽っていたが、ほんとに負けてしまった。

個人的な印象だが、今回の予選は、サッカーファンの盛り上がりが全然感じられない。Twitterのタイムラインには、中継を見ている人が一人もいなかった。

自分自身も、盛り上がっていない。今のフル代表に魅力を感じられないからだ。メンバーこそ豪華だが、選手たちがみな自己中心的で、チームワークが希薄に思える。苦しい状況に陥ると、すぐにチームがばらばらになってしまう。観ていてつまらない。

個人的には、初戦負けたことで逆に面白くなる可能性を感じた。この絶望的敗戦によってチームメンバーの結束が高まり、奇跡的にチームが強くなる……みたいな。

まぁ、このままズルズルと最速敗退決定しても、そんなにショックを受けない自分を予想できるのだが。どうしてこうなったんだろうなぁ。

お盆を過ぎたら

8/22夜。クルマで家に帰る途中、対向車のライトの中にカゲロウの群れが浮かび上がった。川沿いなのでカゲロウは普段からよく目にするが、今夜はとくに多い。自宅の窓にも、明かりを求めて無数のカゲロウが張り付いていた。

それが、翌日の夜からぱったりと姿を消した。それに合わせるように、ベランダの物干し竿に毎朝巣をかけていたクモも見かけなくなった。そう言えば、セミの声も聞こえなくなっている。 

信州の秋は、お盆を過ぎたらすぐに来るのだな。

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お盆の初め頃からずっと軽い頭痛と吐き気に悩まされていたのだが、病院が盆休みなので診てもらうことができなかった。いつも、この時期に体調を崩している気が…

目の奥が痛かったので最初は眼科に行った。しかし、目に異常はなく、脳神経科の病院に行って検査を受けるように指示された。自分としてはそこまで大ごとにする気はなかったのだが、最近同じような症状で脳腫瘍が発覚した患者さんがいたらしく、先生(美しい女医さん)に「今週中に行くように」と釘を刺されてしまった。

仕事を調整して、2日後に脳神経病院へ。CTを撮影すると、果たして、脳にはまったく異常がなかった。異常があったのは、鼻の奥だった。原因は副鼻腔炎だった。副鼻腔にたまった「うみ」が、CT画像にはっきり写っていた。

一週間分の抗菌剤を処方してもらい、帰った。

考えてみると、これまでの原因不明の体調不良もこれのせいだったかもしれない。もっとも、数え切れないほど耳鼻科に通ってきて、一度も「副鼻腔炎」と診断されたことはないが…。診断が難しいのだろうか。

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先週末、バイクでふらっと行った菅平牧場。この後、ソフトクリームを食べていたら雨に降られた。

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Obon感

昨日は仕事が忙しく、集中して作業していたら、夕方から頭痛がひどくなってダウン。今日もクルマに半日乗っていたら、頭痛に襲われた。夏風邪か?

しかし、よく考えたら熱中症だった。冷房の効いた空間にいたのでのどが渇かず、長時間、水分を摂っていなかった。反省して、「いろはす」を1ケース買ってきた。これでまめに水分補給しよう。

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先週から、長野県はお盆真っ盛りな感じ。毎週末、どこかで花火が打ち上がり、浴衣姿の少女たちが暮れなずむ街に繰り出す。

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スーパーには、仏花や干菓子、おいしそうなおはぎが並んでいる。送り火に使うらしい、白樺の樹皮なんかも売っている。国道には県外ナンバーのクルマが目立ち、ショッピングセンターに行けば親・子・孫の三世代で買い物に来た家族連れがあちらこちらで歩いている。

個人的には9月まで帰省する予定がない。暦通りに仕事をする毎日。11日の「山の日」は、せめて山の近くに行こうと友達とバイクで日帰りツーリングに出かけた。オール下道で200km。

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鬼無里あたり。奥の方に見えるのが戸隠山(たぶん)。

 

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青木湖。キャンプ場はぎっしり満員だった。

 

今日は友達のクルマに便乗して、高原に涼みに行った。

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山上のホテルに向かうレトロなバス。

 

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アキアカネ

 

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新鮮牛乳のソフトクリーム。

 

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寝たまま草を食う羊。

 

帰宅して少し昼寝した後、高校野球の第四試合をテレビ観戦した。このだらけた感じ、盆休み感。

『犬と、走る』

この本の存在を知ったのは、2年前の朝日新聞の書評欄だった。

学生のときに体験した犬ぞりを忘れられず、25歳で安定した仕事を辞め、何のつてもなくカナダに移住し、極貧生活を経て、15年かけて夢を叶えた女性の自伝的ノンフィクション。書評では、著者の破天荒なプロフィールが主に紹介されていて、なんだか面白そうに思えた。

いつか読もうと思いつつ、忘れかけていたのだけど、今年、NHKのドキュメンタリー番組でこの人……本多有香さんによる犬ぞりレース挑戦が取り上げられていた。図らずも、本を読む前に本の続きを見ることになった。

番組の中で、本多さんはベテランのマッシャー(犬ぞり師)として登場し、犬たちを巧みに導いてアラスカの白い雪原を走っていた。自分と同い年だが、とても魅力的な女性だった。レース前のレセプションで美味しそうにビールを飲む姿を見ると、かなりの酒好きとわかる(本の中でもバーに入り浸っている)。気さくで酒好き、しかも美人なのだ。

一方で、番組は厳しい現実も紹介していた。冬のシーズン中はトレーニングにかかりきりなので、レースの資金は夏だけで稼がなければならない。数十頭の犬たちのえさ代にも莫大なお金がかかる。ビル清掃などのバイトを入れまくっても足らず、自分の食事代を削る始末で、見かねたハンバーガーショップのオーナーがただで食事を提供していた。

本を出版しても、この極貧生活なのか。今年文庫化されたから、少しは印税が行けばいいのだけど。

TVでその極貧ぶりに軽く衝撃を受けていたのだが、本を読んだらもっとすごかった。お金がないのでカナダからアラスカまで1200キロを中古のボロ自転車で走破したり、先輩犬ぞり師の下で過酷な下働きを4年間も続けたり(ほぼ無給)、オーストラリアにビザなし入国して不法労働したり。

TVで紹介されていた本多さんの自宅も、ホームセンターで買ってきた資材を一人で組み立てたものだった。というか、その土地を開墾することから自分でやっていた。一人で森の木を切り倒し、借りてきた重機を自分で運転して整地したのだ。すべては、お金を節約し、犬ぞりレースに備えるため。

そこまでして追い求める犬ぞり師の道。職業と言うには稼げなすぎるし、趣味と言うには犠牲が大きすぎる。このまま進んでも、決して安定することのない過酷な未来が続いている。

それでも。大きな自然に囲まれながら、静かな冬の森を犬たちと駆け抜けるひとときは、それまでの苦しみをすべて帳消しにするほど素晴らしいのだという。風の音とそりの音、犬たちの息づかいだけが聞こえる世界。

 

あの番組を見て、この本を読んだ後、生き方についてよく考えるようになった。その気になれば、どんな人生も選び取れるんだなぁ、と。

 

犬と、走る (集英社文庫)