神戸まで走る

今回の引っ越しは、東京から神戸まで。当然、バイクは自走で運ぶことにした。

当初は、引っ越し荷物を送り出して不動産屋に部屋を引き渡した後、富士山近くのキャンプ場でキャンプし、翌朝から東名高速道路でひたすら西に向かうという計画を立てていたが、さすがにそれは体力的に無理だと諦めた。代わりに、茅ヶ崎の兄の家で一泊することにした。

引っ越し当日の5/6朝、天気は曇り空で、やたら寒かった。昼になれば暖かくなるだろうと思っていたが、逆に気温が下がってきて、冬に逆戻りしたような寒さに。引っ越し荷物から分厚いフリースの上着を出して着込む羽目になった。キャンプしていたら大変なことになっていた。

一応、余裕を持って早朝から引っ越し準備を進めていたのだけど、やることが予想以上に多く、引っ越し屋が来る時間まで休む暇もなかった。まったく、一人暮らしの引っ越しは大変だ。やるたびに消耗して、寿命が縮む感じがする……

 引っ越し屋は業界第一位の会社を選んだ。さすがに手際が良く、テキパキと梱包・搬出が進む。表の道路が狭いので、車を通すために何度かトラックを移動しなければならなかったが、1時間ほどで搬出は終了した。不動産屋のチェックが終わって、鍵を引き渡したのが17時。

バイクに荷物を積んだ後、冷蔵庫に最後まで残っていたコーラを飲んだ。2年住んだ部屋を見上げる。東京一人暮らしはこの部屋で最後にするつもりだったけど、こんなに早く出て行くことになるとはなぁ。

近所のいつものスタンドでバイクにガスを入れて、出発。環七→世田谷通り→環八→東名。高速に乗ると寒くて、グリップヒーターのスイッチを入れた。19時に茅ヶ崎着。

翌朝、快晴。少し肌寒いものの、昨日よりは暖かい。8時に出発。

計画では早々に東名高速道路に乗るつもりだったが、前夜に兄から「バイクで高速道路はつまらないから、せめて箱根越えるまでは下道で行っとけ」とアドバイスされた。それもそうだと思い、とりあえず西湘バイパス→箱根新道と走ることにした。

ゴールデンウィークが終わった平日、いつも混んでいる海岸沿いの国道も空いていた。西湘バイパスから太平洋を眺めつつ、気持ちよく走る。

初めて、西湘バイパスの下りパーキングエリアに立ち寄ってみた。バイク駐車場から水平線が見える、素晴らしいロケーション。これから箱根を攻めに行く(と思われる)ライダーたちが集まっていた。 

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湘南海岸に別れを告げて、箱根新道へ。こんなに狭かったっけ?

箱根の山を眺めながらのんびり走っていると、十数年前に箱根をバイクで越えたときの記憶がふいに蘇ってきた。そうだ、あのときは2月頃で、路肩に雪が積もっていた。バイクはSRX250。パワー不足でなかなか登らなかった。

坂を登り切った峠の交差点で止まったとき、デジャヴのように鮮明な記憶を思い出した。この交差点で信号に引っかかって、寒さに震えながら、こうして遠くの沼津の街を眺めたんだった。

あのときはそのまま下道を走り続け、名古屋で一泊して、神戸に帰った。今回は、そんな暇はない。

ゆるゆると峠を下り、沼津の街に入ったところで地図を確認。ちょっと引き返して、伊豆縦貫自動車道から新東名高速道路に乗ることにした。ガソリンを補給して出発。

伊豆縦貫自動車道も広々として快適な道だったが、新東名はもっとすごかった。路面も路肩も、中央分離帯も標識も、道路をまたぐ橋さえも、すべてがピカピカで新しい。そして広い。カーブが少ないので安心して流していられる。トンネルの照明も、なんだか斬新だった(見やすかった)。

快適すぎてすぐに眠くなった。清水PAに立ち寄る。当然のことながら、ここもピカピカ。トイレの設計が凝りすぎていて、ちょっと戸惑うほどだった。一番驚いたのは、モーターサイクルウェアの老舗「クシタニ」のショップがあったこと。そういえば本店は清水だったような。ジャケットからブーツまで全身クシタニで固めていたので、ちょっと恥ずかしかったが、ショップに入ってみた。うーむ、相変わらず高い。限定の革財布にちょっと惹かれた。

小腹が減ったので、焼きたてパン屋でクリームパンとコーヒーを購入。山の緑を眺めながら食べる。 

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新東名、道路自体はすごく良いのだが、ずっと同じような山の中を走るので、景観の変化が全然ない。だんだん飽きてくる。バイクで走るには退屈な道だ。純粋に移動するだけなら最高なのだろうけど。

浜松SAで昼食に。なんとなくロースとんかつ定食。1500円の鰻丼は食べなかった。

浜松を出てすぐに、新東名が「旧」東名に合流した。すぐに道幅が狭くなり、路面がボコボコに。ああ、えらい違いだ。そして、周囲の車の運転が急に荒くなってきた。これが話に聞く「名古屋走り」か。車間距離が狭い。注意して進もう。

伊勢湾岸自動車道路に入る。やがて前方に、吊り橋の巨大な主塔が見えてきた。ここを渡るのか。

橋に登ると、一気に視界が広がった。無機質な工場地帯をひとまたぎに通過する高速道路。午後の強い日差しの下に、ピラミッドのような斜張橋がいくつも続いているのが見えた。ひとつ橋を越えるたびに、またひとつ巨大な橋が現れる。

この構造物全体を作り上げるのに、どれだけの富と時間が費やされたのだろう。というか、このレベルの巨大構造物が日本全国にあるんだよなぁ……ちょっと気が遠くなった。

暑くて喉が渇いたので、刈谷SAで小休止。木陰でアイスカフェラテを飲む。

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東名阪自動車道から、新名神高速道路へ。このあたりの記憶があまりない。とにかく眠かった。土山SAで休憩したが、どうしても眠さが抜けず、すぐ近くの草津PAにも立ち寄った。ここで気合いを入れておこうと、コンビニでホットコーヒーを買い、ゆっくり休憩した。

それにしても、NEXCO東日本と比べると、NEXCO中日本・西日本のSA/PAは貧弱だなぁ。施設自体が老朽化して場末感が漂っているし、全体的に狭いので、落ち着いてコーヒーを飲めるようなスペースが少ない。このPAでも日差しを避けて座れる場所が見つからず、縁石に座ってコーヒーを飲む羽目になった。

 ともあれ、かなりリフレッシュできた。夕暮れの名神高速道路をひた走る(京滋バイパスに入り損ねてしまった)。

念のため吹田SAで最後の休憩を取った後、西宮ICで高速を降りた。ETCの料金表示を見るのが怖かったが、意外と少なくて拍子抜けした。まぁ、こんなもんかな。

日が沈んだ18時頃、家に到着。東京のアパートからの走行距離は、553kmだった。

今回、セローでもその気になれば1日500km移動できることがわかった。でも常に全開走行だから、エンジンに負担がかかりそうだ……次回はもっと大きなバイクで500kmツーリングに挑みたいな。