猟果

あけましておめでとうございます……の時期はとうに過ぎ去ってしまった。しかし、2020年の幕開けが思いもよらない出来事で始まったことは、記録しておこうと思う。

例年のとおり、年末年始は実家に帰省した。ただ、ぎりぎりまで猟の予定を入れたかったので、いつもよりもコンパクトな帰省になった。30日の出猟に参加した後(また空振りに終わる)、31日に満員の新幹線に乗って神戸へ。明けて3日、また満員の新幹線で東京に戻った。

4日の巻き狩りは新年一発目ということで、参加者の皆さんの気合いが感じられた。鉄砲の数は今までで一番多く、5丁。気温は低いものの、よく晴れて、残雪も少なく、山歩きには最高の日和だった。

入念に立てた作戦に従って、チームに分かれて山に入る。凍った雪道を10分くらい歩いたところで、無線が入った。「イノシシ獲りました!」

獲ったのは、グループで一番若い男性猟師。しかし、実力派の猟友会で数年間もまれてきた猛者である。勢子に追われて林の中からフラフラ出てきたイノシシを、ハーフライフルで一発で仕留めたのだった。

合流してみると、でっぷりと太ったオスイノシシが地面に横たわっていた。体長は1.2mほどだが、腹がパンパンになるまで太っている(最初、妊娠しているメスかと思った)。推定体重100kg。

用意していたキャリーカートでは重すぎて運べないため、倒木とビニールシートを使って即席の担架を作り、4人がかりで運ぶことになった。それでも長くは運べない。やがて、おじさんたちの足腰が限界を迎える……。

この日は、人数が多くて助かった。交代しながら運ぶ。

軽トラにイノシシを乗せて、解体小屋へ。この時点でもう夕方近くになっていたので、後日解体しようという話も出たが、なんとなく勢いで解体を始めてしまった。重すぎて吊せないので、軽トラの荷台に載せたまま、5、6人でイノシシに襲いかかる。腹を裂くと、湯気が立ち上って、分厚い脂肪の層と白い腸が現れた。

不意に思い出したのは……スターウォーズEP5で、凍死寸前のルークを温めるために、ソロがトーントーンの腹をライトセーバーで切り裂くシーン。あれと同じだ!と、密かに興奮していた。でもこの中には入りたくない!

皮の下には厚さ3センチくらいの皮下脂肪があった。内臓にも黄色い脂肪がついている。とにかく、異常なほど脂の多いイノシシだった。

頭から肩にかけての皮下脂肪は、プラスチックのように硬くなっていた。オスイノシシは他のオスと戦うときに相手の牙から身を守るために、この部分の脂肪が硬化するのだという。

ハーフライフルから放たれたサボットスラグ弾は脇腹に命中し、肝臓を引きちぎって、反対側の硬い皮下脂肪の下で止まっていた。直径1cm以上ある鉛弾を止めるほどの硬さなのだ。動物の体の仕組みは、興味深いことだらけだと思う。

全身の皮を剥いで、脚を外し、頭を落とし、骨から肉を切り離して部位ごとに整理し……掃除も終えて肉を分配する準備が終わったときには、0時近くになっていた。

皆、疲れていたが、まだハイテンションの興奮状態が続いていた。終電が近い人が多かったので、その場で肉を食べられなかったのが残念だった。

いにしえの縄文人も、獲物が獲れたときはこんな感じだったのだろう。夜通しの宴になったに違いない。

 

狩猟に何を求めるのかは、人によって違うと思う。ストイックに1人で獲物を追い、忍び寄って仕留める「忍び猟」にこだわる猟師も多い。確かに、物語やエッセイで読む忍び猟はカッコいいし、憧れる。

ただ今回の狩で、僕がやりたいことは(やるとすれば)仲間と一緒に狩りをして分かち合うことだ、と気付いた。1人で狩りをしても、僕には獲物を山から降ろすことも、解体することも、食べ切ることもできない。

この先、どういう形で狩猟に関わるのかわからないが、1人でやることはないと思う。仲間がいてこその、狩猟なのだ。