蓼科山と不思議な猫

天気がよく、空気が澄んでいる朝には、自宅のベランダからこの山のてっぺんが見える。整った台形の、きれいな山頂。洗濯物を干しながら、いつか登らないといけないなと思っていた、蓼科山

今年中には登ろうと決めていたものの、気が付けばもう10月。眺望の良さで知られる山なので天候のよい週末を狙っていたのだけど、なかなかタイミングが合わなかった。三連休の最終日、天候も体調も整ったので、やっと登ることができた。

選んだルートは、一番楽な御泉水コース。登山口の駐車場が混むという情報を得ていたので、早めに自宅を出たのだけど、途中で手袋を忘れたのに気が付いた。急遽、白樺湖のローソンに寄り道していたら、到着が9時前になってしまった。2つの駐車場はもう満車。しかたなく、路肩の細い空き地に車を停めた。数日前の雨で泥沼のようになっていたが、四輪駆動だから大丈夫だろう。

一の鳥居をくぐって、登り始める。最初は森の中の緩やかな登りが、次第に急登に。とにかく、ずーっと登り続けで平地がない。山だから仕方ないけど。

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登りがキツいことはわかっていたから、今回はトレイルランニング用のシューズを履いた。いつもの登山靴と比べると、羽のように軽い。登り自体がしんどいことに変わりはないが、脚の筋肉への負担は確実に減る。ほとんど休むことなく、一気に中間地点の将軍平まで登ることができた。ここまで1時間。

 

蓼科山荘の前で一休みした後、山頂に向けて出発。ここから、本当の急登が始まる。立ちはだかる岩の数々を、両手両足を使ってよじ登る。わざわざ手袋を買いに行った甲斐があった。

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体はしんどいが、楽しい岩登り。

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30分後、山頂に到着。自宅からよく眺めていた山の上は、想像とは全然違う世界だった。こんなに岩だらけの場所を見たのは、生まれて初めてだ。

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巨大な岩の間には深い隙間があり、危険だ。慎重に飛び移りながら、先に進む。スマホで写真を撮るときも、ヒヤヒヤした。岩の隙間に落としたら回収不可能だ。

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円形の山頂をぐるりと一周し、ど真ん中にある蓼科神社奥社に参拝した後、八ヶ岳を眺めながらお握りを食べた。

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今回使ったトレランシューズ。その軽さには大きなメリットを感じたが、今回の蓼科山には不向きだった。土や砂利の地面にはよくグリップするのだけど、岩の上では滑ってしまうのだ。いつもの登山靴は粘りつくように岩にグリップするので、感覚の違いに戸惑った。帰り道、濡れた石で滑って尻餅をついてしまった。

この靴は使える状況が限られそうだ。うーむ、軽くて滑らない登山靴が欲しい……。

 

帰り、山小屋泊の気分を味わおうと、蓼科山荘でティーブレイク。

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下山後、長門牧場に寄った。蓼科山がよく見えた。

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あんなところまで登ったんだなぁ。七合目まで車で登ったにせよ…

 

ところで、今回も山の不思議に出会った。いや正確には「山」ではないのだけど、自分の中では「山の不思議」。

車で登山口に向かう途中、対向車線で猫が死んでいるのを見かけた。夜のうちに、車にひかれたようだ。こんな辺鄙な田舎道で車にひかれるとは、不運なヤツだ。

下山後、車で家に向かっている途中、目の前を猫が横切った。体の大部分が白色で、頭とお尻に薄茶色のぶちがあり、しっぽがシマシマ模様になっている。朝、死んでいた猫とまったく同じ柄だった。

あれー?と思いながら、通り過ぎた。別に怖くはないが、気になった。

翌日も、仕事をしながら、その猫のことを考えていた。そして、ふと思い当たった。この問題を客観的に検証する手段があるじゃないか。ドライブレコーダー。それに気付いたとき、初めて怖くなった。もしも記憶違いじゃなかったら、どうしよう?

緊張しながら、ドライブレコーダーの映像をチェックした。

その結果。確かに、道に横たわる白っぽい猫の死骸と、道を横切る白っぽい猫の姿を確認できた。しかし解像度の問題で、体の模様まではわからなかった。とくに道を横切る猫は記憶よりも遠くにいて、レコーダーの広角レンズではゴマ粒ほどにしか写っていなかった。

一度死んだ猫が生き返り、9時間後に20km移動して悠々と歩く姿を見せたという怪異の可能性は、ゼロではない……ということか。そんな奇跡が起きる理由も意味も、まったくないけど。