「すべてがFになる」アニメ版

Amazonプライムビデオの導入で、家に居ながらにして映画でもドラマでもアニメでも好き放題見られるようになったのに、レンタルビデオ屋で3年前のTVアニメを借りて見ていた。

このアニメ版「すべてがFになる」。制作が発表された2015年当時、すごく気になっていたのだが、放送が始まったときには忘れてしまい……先日ビデオ屋でDVDのパッケージを見つけたときに、3年ぶりに思い出した。 

森博嗣の原作を読んだのは10年近く前だと思う。長大なミステリー小説、しかも本格推理ということで手に取ったのだけど、とても面白く読んだ。個性的な登場人物、緻密に作り上げられた密室、哲学的な対話、すべてが分厚い1冊に詰め込まれていて、最後のページまで満足できる作品だった。

続けて、このシリーズの作品を何冊か読んでみたのだけど、残念ながらこの「すべてがFになる」を凌駕する作品はなかった。迫力がまったく違うように思う。

アニメに先行して制作されたドラマは、放送時に見ていた。しかし、原作の「すべてがFになる」に該当するエピソードは2話しかなく、謎解き中心のストーリーになっていた。いろいろはしょりすぎて、満足できなかった。あと、綾野剛の「犀川創平」はともかく、武井咲の「西之園萌絵」は原作のイメージとだいぶ違うなぁという印象だった(19歳には見えなかった…)。

だからアニメ版に期待していたのだけど、見るのを忘れていた。 

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原作を読んでからだいぶ時間が経ったので、うろ覚えな部分があるが、かなり原作に忠実な映像化だと思う。主要キャラクターのデザインは、自分が抱いていたイメージにかなり近かった。それを補強していたのが、声優陣の巧みな演技。特に西之園萌絵は、天才的頭脳を持ちながらも子供っぽさを残し、普段は理知的なのに犀川にだけ感情豊かに振る舞うという矛盾に満ちたキャラクターなのだけど、見事に演じ切っていた。

ドラマと違って、アニメでは全11話で原作どおりに映像化されている。現実の事件と並行して、謎の人物によって「真賀田四季」の半生が語られるという構成。アニメ版の主役は、この四季であると言ってもいいと思う。自分も四季が好きなので、とてもよかった。原作を読んだときは今ひとつわからなかった四季の心情が、完全に理解できたような気がする。

しかし、改めてストーリーを見直してみると、ミステリーとしては穴がたくさんあるなと感じてしまった。計画的犯行にしては不確定要素が多すぎるし、ずいぶんと危ない橋を渡っている。犯行が成功したのは奇跡に近いんじゃないだろうか。

このアニメはあまり話題にならなかったから、このシリーズの他の作品がアニメ化されることはなさそう。キャラクターデザインと声優がよかったから、残念に思う。デザインを手がけた浅野いにお氏の漫画でも読もうかな……