『我らコンタクティ』

田舎の町工場の青年が、ロケットを自作して宇宙に打ち上げる漫画。

と書くと、「夢も希望も失っていた青年がふとしたきっかけで宇宙に目を向け、奇跡的に有能な仲間たちの助けを借りてロケットを打ち上げるサクセスストーリー!」みたいな話に思えるけど、全然違うのだった。 

我らコンタクティ (アフタヌーンコミックス)

我らコンタクティ (アフタヌーンコミックス)

 

主人公は、自分が何よりもやりたいこと、ただその一点を見定めて、周囲の意見や批判に惑わされることなく突き進む。この迷いのなさが、清々しい。当初は誰にも理解されずに孤立していた主人公は、その純粋さによって協力者を得て、ぶれずに目標を達成しようとする。

日本のどこかの田舎の、のんびりした空気と濃いめの人間関係の中で物語は進む。ほんわかした絵は、白と黒が多くて、どことなくトーベ・ヤンソンを思わせる。かなり好きなタイプの絵だ。実際、完全にジャケ買いだった(それまでまったく知らなかった)。

面白いのは、この絵柄とストーリーなのに、リアルであること。ロケットの構造や打ち上げプロセス、法的な問題などがちゃんと考えられている。技術的には(たぶん)色々と突っ込みどころがありそうだけど、「ファンタジーにしない」という意地が、この作品を特別なものにしている。

本当の現実の中で、本当にやりたいことを成し遂げるという物語だから、面白いのだ。

f:id:charlie22:20180508182645j:plain